書店員レビュー一覧
丸善・ジュンク堂書店・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。1~20件目をご紹介します。
書店員:「ジュンク堂書店仙台ロフト店」のレビュー
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とうに夜半を過ぎて (河出文庫)R.ブラッドベリ (著)
2012年に惜しまれつつ世を去…
2012年に惜しまれつつ世を去った、ブラッドベリの短編集「とうに夜半を過ぎて」。以前は集英社文庫で刊行されていましたが、長年の品切れ状態を経て河出書房さんより発売となりました。内容についてですが、これほど説明に困る作品というのは珍しいのではないかと思います。幻想や恐怖、SFもあれば叙情的なものまで、あらゆるジャンルの詰まった万華鏡のような1冊です。ヘミングウェイの好きな方なら、思わずニヤリとしてしまうスラップスティックなコメディ「親爺さんの知り合いの鸚鵡」(余談ですが登場するシェリー・ケイポンと言う悪役が、実に良い味を出しています)、思い出の中の友情と裏切りにケリをつけるべく、36年ぶりに故郷を訪れた男の意外な結末を描いた「非の打ち所ない殺人」、そして懺悔室の中でチョコレートをきっかけに始まる、神父さんと青年の一夏の交流を描いた心温まる作品「板チョコ一枚おみやげです!」などなど。いずれも傑作ぞろいで、とてもここでは全て紹介し切れない程です。これからブラッドベリの作品を読もうかと思われている方には、是非、お薦めしたい1冊です。