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書店員レビュー一覧

丸善・ジュンク堂・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。120件目をご紹介します。

検索結果 100 件中 1 件~ 20 件を表示

書店員:「文教堂 市ヶ谷店」のレビュー

文教堂
文教堂|市ヶ谷店

歓喜の仔 上 天童 荒太 (著)

歓喜の仔 上

多額の借金を抱えたまま…

多額の借金を抱えたまま突然姿を消した父。植物状態の母。親という支えが機能しない中で生きるのは、高校を辞め昼夜問わず働く長男、学校でいじめにあいながら母の介護をする次男、人には見えないものが見える末っ子の妹。借金を返済するため、そして生きていくために兄弟は暴力団組織から覚醒剤のアジツケの仕事も強いられ、がんじがらめの日々を送っている。

物語では父・母の過去と兄弟たちの世界、そしてリートという少年の世界が交差して描かれる。日本ではない国の紛争地域で生きるリートは、現実世界の過酷な生活から誠が目をそむけるために空想された少年で、もう一人の誠でもある。このリートの話は物語上、必要のないものにみえるかもしれないが、読み進めていくと徐々に誠とリンクしていき、リートは一人の人格として、誠の親友、そして戦友のような存在になっていく。この物語にとって、彼はとても大切な存在だろう。

読むのにはなかなか覚悟がいりそうな、救いようのない世界に思われるが、それと対比した子供たちの描き方はやはり「永遠の仔」著者である天童氏だけあってとても巧い。どんなに過酷な世界にいたとしても、家族と共に生きていく姿、そして幼いなりにも全力で家族を守ろうとする姿は美しい。


(評者:文教堂書店市ヶ谷店 吉永文)

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