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書店員レビュー一覧

丸善・ジュンク堂・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。120件目をご紹介します。

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書店員:「文教堂 赤坂店」のレビュー

文教堂
文教堂|赤坂店

考えの整頓 佐藤 雅彦 (著)

考えの整頓

発行は約1年前ですが、…

発行は約1年前ですが、私の職場(書店)の端で、ずっと売れ続けています。日々大量の新刊がなだれ込み、陳列が入れ替わっていくなか、これはなかなか珍しい事です。
著者の佐藤雅彦氏は、団子3兄弟やピタゴラスイッチでおなじみ。現在では、Eテレの0655と2355というコーナーの監修をしています。「0655」「2355」とは、番組が放送される時刻のこと。5分間ですが、ほっとしつつ、にんまりしてしまう映像と音楽。忙しい日々の始まりと終わりに、一呼吸つかせてくれます。

雑誌「暮らしの手帖」に連載されているエッセイをまとめたこの本は、その文章版といえます。ふつうとは違った物事のとらえ方が、著者の映像と音楽作品のように、心地よい、リズム感あふれる文章でつづられていきます。
例えばこんな話。ある日著者は、交差点で道を尋ねられている警官を見かけます。尋ねた本人の手持ちの地図では小さすぎてわかりにくそうです。すると、やおら帽子を脱ぎ、その中にしまわれていた地図を取り出し、広げて案内し始めたのです。警官が着用している、あたまが平たい帽子が地図の収納に適していたわけです。著者はこの創意工夫に好奇心を湧かせられ、他の警官の収納先も取材してしまう、「おまわりさん10人にききました」。

その他にも、船酔いを予防する奇想天外な方法を作り出した「船酔いしない方法」。ハングル表記の冷麺のつくり方を勝手に佐藤訳で解明する「想像料理法」、などなど。確かに世間一般にとって、考えるために立ち止まることはまずないようなことですが、著者にかかるとなぜかすごく楽しい。とるにたらないものでも、自分自身で考えれば、いかに人間的にいきいきとした時間を開拓できるかを、この本は教えてくれます。著者はその道の名人なのです。

現代社会に流通する情報の量は膨大ですが、日々その流れに翻弄されているだけだったりします。そんなときこの本を開き、わずか5・6ページのエッセイを読むだけで、読者自身の時間が流れ出し、あたまが整頓されていきます。考えが凝り固まったな、と思ったときにオススメです。
さらに、装丁も文字組もレイアウトもデザインが良く、目にしっくりとくるところも、読書の時間を心地よいものにしてくれています。


(評者:文教堂書店 赤坂店 石井義憲)

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