書店員レビュー一覧
丸善・ジュンク堂書店・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。1~20件目をご紹介します。
書店員:「ジュンク堂」のレビュー
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社会学ウシジマくん 難波 功士 (著)
“社会学って、こんなことだった…
“社会学って、こんなことだったんじゃないのかぁ……。これが私の、『闇金ウシジマくん』の読後感です。”と著者は言う。
持てる者と持たざる者との格差の拡大=階級分化、『闇金ウシジマくん』はそれを描いたマンガである。そもそも闇金の顧客(=被害者?)は、リスクを嫌う金融機関に見棄てられた人々。否応なく「近代家族」からこぼれ落ち、その地位や身分は教育・学校によって固定化・世襲化されている。優れたエスノグラフィである『闇金ウシジマくん』の登場人物は、リスク社会学、家族社会学、教育社会学の典型的な対象・見事な標本なのだ。彼らにとって貴重なIDであるケータイが、生きのびる為にいかに重要であるかを考察すれば、すぐれたメディア論となるだろう。
ウシジマくんたちは、セーフティネットから漏れ落ちる人たちに対し「とどめをさす存在」でありながら、かつ「最後の受け皿」である。そして仲間の竹本が「(ダメな奴も)いつかは変わる」と人文学的な台詞を吐くのに対して、主人公丑嶋馨は、「ダメな奴は簡単に変われねェよ」と社会学的に言い放つ。
本書が『ウシジマくんの社会学』ではなく『社会学ウシジマくん』である理由が、そこにある。