書店員レビュー一覧
丸善・ジュンク堂書店・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。1~20件目をご紹介します。
書店員:「ジュンク堂」のレビュー
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ボサノヴァの真実 その知られざるエピソード Willie Whopper (著)
1950年代末ブラジルでボサ…
1950年代末ブラジルでボサノヴァが誕生し、それがアメリカで大流行した過程については多くの言及がなされた。ジョアン・ジルベルトとアントニオ・カルロス・ジョビンの出会い、「シェガ・ヂ・サウダーヂ(想いあふれて)」の大ヒット、「イパネマの娘」の録音後の二人の決別。本書はそんな定説に対し、見過ごされてきたエピソードや時代背景などを踏まえより広角的にボサノヴァを把握している。
まずボサノヴァの三聖人(ジョアン、トム・ジョビン、ヴィニシウス・ヂ・モラエス)がボサノヴィスタではないと著者は分析する。インストゥルメンタル中心のトム、詩人としてすでに著名だったヴィニシウスはともかく、ジョアンをボサノヴァから外すのはいかがか。変人で孤立していることが潮流から外れているとするのはやや早計か。トムや妻・アストラッドに発声を伝授した法皇(神とは確かに大げさだが)は唯一無二の存在だ。
カエターノ・ヴェローゾやジルベルト・ジルとも共演したジョアンだが極度の偏執者でキャンセルも多い。奇跡的な東京公演はCD化されたが、自国のW杯で歌うことはまずあるまい。
黒書店員 D