書店員レビュー一覧
丸善・ジュンク堂書店・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。1~20件目をご紹介します。
書店員:「文教堂 カレッタ汐留店」のレビュー
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職業、コピーライター 広告とコピーをめぐる追憶 SINCE 1966〜1995 小野田 隆雄 (著)
懐かしいコピーが…
懐かしいコピーがたくさん出てくる。著者の小野田さんは業界では著名なコピーライターですが、1966年に大学を卒業して資生堂に入社。宣伝部でコピーライターとしての修行が始まるところからこの本は始まる。「インターネットという怪物が、まだ広告のメディアとして機能していなかった時代」である。
『その日は雨でも、わたしは爽やか。』
著者が資生堂に入って初めて書いた生理用品のキャッチフレーズだが、この一本が採用されるのに何十本ものキャッチフレーズを考えた話が書かれている。当時資生堂にいたデザイナーの石岡瑛子氏に触発を受け、1969年の東京コピーライターズクラブ新人賞に受賞した女性化粧品のコピー『効果的なシャドウは 目を伏せても美しい』というのも記憶に残る懐かしい作品である。
資生堂での活躍の後、著者はフリーランスのコピーライターとして独立し三菱の軽自動車・ミニカやサントリーウイスキーの広告を手がけるが、特にサントリーの『名作は、まず香り立つ。 新リザーブ誕生』『ウイスキーの決め手はモルトです。』は名作である。
しかし、それにしてもあの短いフレーズで人を引き付ける「コピー」とは不思議なものである。素人はそのコピーの言葉は天から啓示の如く舞い降りて来るように思うのだが、この本を読めば実はプロが舞台裏ではたくさんのアイデアを散らばし、積み重ねるという地味で実務的な努力を重ねた結果の珠玉の言葉なのだという事が良く分かる。優れたキャッチコピーには遊びがあり、俳句とはまた違った「余白」と「虚」(勿論、商品説明の嘘ではない)の空間があるように思う。
(評者:文教堂書店カレッタ汐留店 ビジネス書担当 森静男)
(2013/3/21 UPDATE)