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書店員レビュー一覧

丸善・ジュンク堂・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。120件目をご紹介します。

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ジュンク堂 池袋本店店員

書店員:「ジュンク堂書店池袋本店」のレビュー

ジュンク堂
ジュンク堂|池袋本店

ポップの現場から 川勝正幸in TV Bros.1987→2012 川勝 正幸 (著)

ポップの現場から 川勝正幸in TV Bros.1987→2012

優れた文化の周辺には…

優れた文化の周辺には、優れた語り部が存在することが多い。語り部は創作者たちに寄り添い、彼らの仕事を世界に向けて紹介する。昨年2012年に逝去された川勝正幸は間違いなく、日本のある種のポップカルチャーにおける最良の語り部の一人だった。

本人はその言葉を良しとしなかったようだが、1980年代以降の日本における、いわゆる「サブカル」文化のフォローやサポート、そしてそのレポートをし続けたのが川勝だった。テレビ雑誌「TV Bros.」に25年に渡って連載された文章を纏めた本書においては、いとうせいこうや宮沢章夫、スチャダラパー、小泉今日子、根本敬にクレイジーケンバンド、松江哲明、そして女王蜂と、様々な日本の表現者たちの活動についての文章が記述されており、そしてその合間を縫うように、欧米のポップカルチャーについての言及や紹介が綴られている。また川勝はいわゆる「渋谷系」と呼ばれた1990年代の文化現象の形成に大きな役割を果たしたが、その当時の現場状況についての記述も多く含まれているのも、特に興味深い点である。

川勝の文章にはいわゆる批評性が少ない。本書にも、論理性を背景にその表現の構造や性質を分析するような文章はほぼ皆無と言ってもよい。しかし、現場のエネルギーや面白さに巻き込まれながら、対象と癒着しない絶妙な距離を保ち、それらの文化への深い愛情を持つことから生み出された彼の文章は、いわゆる”批評家”たちには決して書けないものだ。川勝の存在は、やはり日本ポップ史の偉大な”語り部”の一人として語り継がれるべきものであり、その存在感は今後においても、希有のものとして我々の前に在り続けることだろう。


(評者:ジュンク堂書店 池袋本店 芸術書担当 下田裕之)

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