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書店員レビュー一覧

丸善・ジュンク堂・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。120件目をご紹介します。

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文教堂 カレッタ汐留店店員

書店員:「文教堂 カレッタ汐留店」のレビュー

文教堂
文教堂|カレッタ汐留店

零戦 その誕生と栄光の記録 (角川文庫)堀越 二郎 (著)

零戦 その誕生と栄光の記録(角川文庫)

著者の堀越二郎は…

著者の堀越二郎は零戦の設計者である。
東京帝国大學航空学科を卒業、現在の三菱重工に入社した。明治36年の生まれで、奇しくもアメリカでライト兄弟の飛行機が初めて空を飛んだ年である。

今年の夏、主人公を堀越二郎にダブルイメージした宮崎駿監督のアニメ「風立ちぬ」が上映され、また百田尚樹の「永遠のゼロ」も12月の映画化に伴い再度ロングのベストセラーを続けている。堀辰雄がポール・ヴァレリーの詩句「風たちぬ、いざ生きめやも」をその題名とした物語は婚約者の死に捧げた美しいレクイエムで、散文詩とも言える小説である。飛行機に対するモチーフとしては対照的な作品が書店の平台で妙なコラボを演出し、ゼロ戦が注目されている。零戦関係の著書は膨大な数に上るが、この本はいわば設計者による零戦の基本書である。語り口はわかり易い。

著者は言う、「日本人が、もし一部の人の言うような模倣と小細工のみに長けた民族であったなら、あの零戦は生まれえなかったとおもう」と。
当時の航空機技術の世界水準を大きく上回った零戦は、日本の厳しく差し迫った情勢から来る戦略的・戦術的要請を〈常識を破る〉発想により設計された。それまで欧米に頼っていた航空機技術から独立し自力で開発・生産するには、一国の基礎学問から技術・資源・関連産業・人的資源までがトータルにマネジメントされなければならない。
この本を読むとすでに昭和10年代の日本海軍には、航空機を実戦配備するまでの工程が極めて組織だって出来ていたことが分かるが、しかしアメリカが恐れたこの優秀な戦闘機ときわめて錬度の高かったパイロットに頼り続け、後続の新航空機の開発・生産が間に合わなかったのが国力の限界であったことが良く分かる。改良はされ続けたものの後続するべき新航空機開発が間に合わないが故に、物量的に技術的にそして戦略的に敗北してゆく戦闘の中で、ついに「神風特別攻撃隊」が編成される。

「戦闘機」零戦の設計思想からみても、これは悲劇以外の何ものでもない。著者もまたあとがきで「飛行機とともに歩んだ私の生涯において、最大の傷心事は神風特攻隊のことであった。」と述べている。
零戦生みの親であった著者の胸中如何ばかりであったことであろうか。
この本は最初1970年、著者67歳の時に光文社から出版されたものの新装版である。


(評者:文教堂書店カレッタ汐留店 ビジネス書担当 森静男)

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