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書店員レビュー一覧

丸善・ジュンク堂・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。120件目をご紹介します。

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ジュンク堂 難波店店員

書店員:「ジュンク堂書店難波店」のレビュー

ジュンク堂
ジュンク堂|難波店

立身出世と下半身 男子学生の性的身体の管理の歴史 澁谷 知美 (著)

立身出世と下半身 男子学生の性的身体の管理の歴史

国家は、いかにして男子の性を管理したか?

セックスが「人類存続の任務」を担う重要な仕事なら、なぜ大人はセックスを奨励しないのか、少年期から訓練してしかるべきという発想が無いのは、なぜなのか?
年齢こそ、性的身体に何を許し、何を禁ずるかを社会的に決定する基準だからである。青年期の男性が期待されているのは性的身体の利用(登楼、恋愛、結婚)ではなく「立身出世」であり、「よき国家」や社会に貢献する生産性の向上であり、その再生産性は生産性に従属するのだ。だが、青年期は男性の性欲が抑えようもないほど高まる時期でもある。それゆえ、生徒たちの性的身体を管理することが、学校という機関に期待される。
だが、青年期の性欲の高まりと共に、現在の性的身体の使用を禁じつつ、将来の使用を勧めなければならないというアクロバティックな課題ゆえに、性教育は原理的な困難を伴う。時に不良青年が幼者や婦女に暴行凌辱を加え、学校現場にも警察権力の介入が要請される。
医療機関もまた、介入する。その典型的な場面が、M研と呼ばれる、入学試験時における花柳病(性病)検査である。軍隊入隊時に行われていたものが学校現場に導入されたのだ。著者は旧制高校出身者へのアンケート、聞き取り調査や残された資料(その多くは、受験雑誌の受験相談欄、健康相談欄だ!)から、M研の実態を丹念に再現していく。実際にはM研の実施は思ったよりも少なかったようだが、多くはないが皆無でもない実施頻度によって、そしてほかでもない入学試験に取り込まれることによって、M研は性的身体の「自己管理」を男子学生に定着させた、という。
男子学生たちは、他の受験生の眼前で、時には看護婦も同席する中、全裸になり、医師によって自らの男性器をいじられ、肛門に検便器を挿入される、そうした屈辱的な経験の中で、自己が男であることを確認させてくれ、男としての感覚をもたらしてくれる男性器に、脆弱な身体感覚が宿っているという事実を知る。
そうした、男性器が持つ「強さ/弱さ」の両義性、男としてのアイデンティティを揺るがす危機感、そこにこそ、男性が決して積極的に自己の性に向き合おうとしない、語ろうとしない原因があり、著者が提出するもう一つの問い=「男性の性/身体研究が存在しないのは何故か?」の答があるのかもしれない。

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