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書店員レビュー一覧

丸善・ジュンク堂・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。120件目をご紹介します。

検索結果 100 件中 1 件~ 20 件を表示

丸善 札幌北一条店店員

書店員:「丸善札幌北一条店」のレビュー

丸善
丸善|札幌北一条店

ブラックライダー 東山 彰良 (著)

ブラックライダー

美しい表紙に隠されたグチャグチャ

自分ではオモシロかったけど、人にお勧めするのは憚られる。
「ブラックライダー」はまさにそんな作品でした。たった今読み終わったので興奮冷めやらないうちにご報告させていただきたいと思います。かなり内容に触れているのでご注意ください。

1帯の惹句に書いてあることはほぼその通りです。特に万人向けでない、の部分は同意。
 「このミス」上位だからと言って気軽に購入するのは考え物。

2表紙は本当に美しいですが、表紙の牛ベビーが大きくなってから黒い馬に乗って
 ブラックライダーを名乗り、悪いやつをバッタバッタとやっつける痛快娯楽作品!!・・・では
 全然ないです。

3最後にストンとはまる結末を迎えない。また、登場人物が多いのに
登場人物一覧が無く、読み進めるのにはある程度根気が必要。というか
もともと分りやすく書こうとしていない(ように感じる)。
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1:短い小説ではないですが、「長いな~」とは感じませんでした。
     何故なら、この世界がどうなるのか気になりすぎて続きを読まずにいられなかったからです。
しかし、ネット等で散々書かれていますが、本当に人を選ぶ作品ですし、
また、読解力が高いからと言って面白い訳ではなく、完全に趣味の問題。

2:美しい表紙は「水沢そら」という方が書いているそうです。
血なまぐさくて泥臭い作品ですので、この表紙にかなり助けられて購買に結びついていると思います
流行りのポストアポカリプスもので、マッカーシーの「ザ・ロード」というよりはキングの「ダークタワー」を思いだしました。または大人版「風の〇のナウ〇カ」。
3部構成になっており主人公が定まらない、いわゆる群像劇。
くわえて終末ものらしく、ページをめくれば息を吐くように人が死んでいきます。
グロテスクな描写は本当にグロテスク。特に子供がバンバン死ぬのは参りました。
結局話の骨子はとにかく復讐の物語である・・・と感じました。

3結末をちょこっと言っちゃうと、生き残った登場人物が「結局最後どうなったか」がはっきりとは書かれておらず、推測するしかありません。本当に死んだのか、実は生きているのかは読者に委ねられてしまいます。
登場人物は多いですが、どんどん死んでは出てくるので、入れ替え立替えで常に5人くらい覚えられれば大丈夫です。
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著者が挑もうとしたのは「史実を創る」ことと、「人間の汚い営みを普通に書く」ことだとおもいます。
「エンターテイメント小説だ!面白いだろヘイッ!」ってなスタンスでは無く、こういう人間たちがこういう世界でこういうことをしました。で、こうなったんですけどどうですか?という書き方。
決して大仰ではなく、かと言って淡々ともしておらず、人殺しも悪党もそれなりの愛嬌があり血が通っている感じがします。とくに2章の主人公、牛腹のマルコの造形は尋常ではないです。他の主役たち、レイン兄弟やバード保安官、またはその愛馬ドットにも愛情を感じることができます。世界観に関して言えば、日本人でこれに匹敵する世界を書ける作家が他にいるとは思えません。このスケールの大きさから、かなりの前準備をしてから書かれた作品であろうと思われます。
新たなジーザス誕生譚に読者をぶち込む様な罰当たりな(褒め言葉)作品です。

「汚い営み」の方ですが、人間が汚い心を持ち続けて生き続けることの潔さ、だと思います。
登場人物のほとんどが敵や国に、蟲や血筋や歴史、果ては自分も許せず、赤黒い復讐の心を常に抱えて、ふたことめには「ぶっころしてやる!」が当たり前の世界で、それがどうした?とみんなフツーに生きている。常に殺したい相手がいることは眉をしかめるようなことなのか?腹が減って人を食ったことはそんなに悪いことか?お前、変なやつだなぁ、と言われ続けられているようでした。
また、蟲の由来や核戦争など、様々なSF的要素がうまく消化されいるとは言えません。しかし何でもかんでもオチを付けて読者に説明する義務は作家には無いのです、多分。

長くて読みづらい、わかりやすいカタルシスもそれほど無く、スカッとした結末も用意されていない。なのに読むのを止められない強烈な吸引力、これが「ブラックライダー」です。
※でも「ブラックライダー」は出てきません。
そして本当に「合わない人は全然ダメ」、まさに本が人を選んでいるのです。おすすめの本を紹介すべきここのレビューに「人を選びます」とか書いちゃってすみませんが、他人の書いたレビューなんざそんなもんだ、ってことで話半分で読んでいただけたら幸いです、ごめんなさい。
読書にお値段分の満足を求める方にはゼロサムゲーム、分が悪いと思われますが、「とにかく凄い本」を読みたい!!と思う方にはお勧めします。選ばれれば凄まじい読書体験ができるでしょう。

サト

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