1. hontoトップ
  2. 店舗情報
  3. 書店員レビュー一覧

書店員レビュー一覧

丸善・ジュンク堂・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。120件目をご紹介します。

検索結果 100 件中 1 件~ 20 件を表示

丸善 札幌北一条店店員

書店員:「丸善札幌北一条店」のレビュー

丸善
丸善|札幌北一条店

地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ・ブックス)ベン・H.ウィンタース (著)

地上最後の刑事(ハヤカワ・ポケット・ミステリ・ブックス)

早川さん早く続きをお願いします。

傑作。

半年後に地球にデカい隕石が落ちてきます。全人類は即死ではないですが、確実に滅亡すると偉い人が口をそろえて言ってます。こんな時に刑事さん、そこのマックで他殺っぽい自殺が発生したんですが、詳しい捜査なんかしませんよね?だってあと半年で世界はなくなっちゃうんだし、今は自殺なんてあちこちで起きてますよ・・・・捜査するんですよ。捜査するからこそ最後の刑事なのです。

世界はアンニュイ、デカダン、ディストピアもいいとこ。苦しまない自殺法のDVDがベストセラーになってます(アマ〇ン?)。そんな世界でも若い主人公パレスは信念に基づき納得できないことは捜査する、正義を行使することに価値があると考える刑事。タイトル通りこれぞ最後の刑事だ、とここでは感じる訳です。
世界のあちこちでは北斗のマッドマックス状態の街も数多くあるようですが、パレスのいる小さい街は比較的平和です。とはいえ突然蒸発したり、自分探しの旅に出たりと警察官が減りまくり今や4、5人。いくらなんでも少なすぎ。
パレス以外の残ってる警官は、ぎりぎり踏ん張ってはいるけれどやる気ゼロの野郎ばかり。ほとんど捜査の助けになりません。
街の住人もピリピリした空気を放っていますが、最後まで人間らしくいよう、という気が伝わるのですが、逆にそれが緊張感を生んでおり、いまにも破裂しそうです。
そんななか、パレスは仲間に笑われても捜査を続けていきますが、途中経過を上司に報告しても
「エ・アロール?それがどうしたの?」とまともに取り合ってくれません。
それでも何とか捜査を続けていきますが、やる気のない仲間や証人に手を焼いたり、可愛いけれど出来の悪い妹に振り回されたり、夢にうなされたりと、紆余曲折の中、
何とか真相に近づくのですが…。

あちこちでSFミステリと紹介されていますが舞台は現代の様ですし、隕石云々以外はSFっぽいところも感じません。でも、全体に流れるけだるい感じ、
レプリカントは出てきませんが「ブレードランナー」の様。ライトなハードボイルドでブレラン大好きな僕は読んでいる間幸せでした。パレスの語り口もドライで詩の様です。
ミステリとして見れば、どんでん返しはあるが事件や真相は地味、革新的なことは何も無いんですが、元々そこで勝負する小説ではないのです。この作品は「世界を感じてナンボ」の作品です。読者は必ず一度は「あと半年の命なら自分はどう生きるか?」と考えるはずで、そう考えてしまった瞬間に物語にすんなり入り込んでしまうのです。著者はそこまで織り込み済みだったのではないでしょうか。

隕石のことを忘れたわけじゃない、でも捜査せずにいられないパレスに「がんばれ最後の刑事!」
と読者は最後までエールを送る事必至です。でも読了後に落ち着いて考えてみると、こんな世界で一つの事件を追い続ける神経を持った主人公こそ、逆にちょっと変なのでは?と考えてしまいました。いずれ消える世界で正気を保つため、個人的な心配ごとで崩れ落ちないために仕事に打ち込むしかないのではないかと。
うまいなぁと思うのは3部作にしたところ。今回はまだ隕石は落ちないのでとりあえずは仕事に集中できる訳です。パレスにも猶予がある訳で今後が気になります。最後にどう決着をつけるのか見当もつきませんが、急にSFづいてブルース・ウィリス的アルマゲドンな解決はやめてほしいと思います。

―以下、犯人が判っちゃう内容です。未読の方はここまでで。―

本作が出版されたのが2013年末、タイトルと内容紹介に惹かれてすぐ読みました。
その時から”とても面白い”印象はあったのですが、犯人の犯行動機なんてすっかり忘れていました。その後、私事ですが2014年1月に子供が出来まして、今回レビューするのにもう一度この作品を読んだのですが、動機が明らかになったところで、今や子持ちの僕は泣いてしまいました。世界が無くなろうとも親の愛は不変なのだな、いやさ、不変であってほしいと思った次第です。

100 件中 1 件~ 20 件を表示