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書店員レビュー一覧

丸善・ジュンク堂書店・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。120件目をご紹介します。

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ジュンク堂書店 池袋本店店員

書店員:「ジュンク堂書店池袋本店」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|池袋本店

遊びつかれた朝に 10年代インディ・ミュージックをめぐる対話 磯部 涼 (著)

遊びつかれた朝に 10年代インディ・ミュージックをめぐる対話

非常にクラシカルなポップカルチャー言論

「インディ・ミュージック」。つまり、大手のレコード会社が関わっていない、資本的に独立性の高いポップミュージック。本書において九龍ジョーは、「社会のメインストリームに位置するわけではないそれらの音楽を語ることでこそ描き出せる時代の相貌がある」と語ります。この言葉に、本書が企図するところの核心部分があると言えるでしょう。マイナーで、世間ではあまり知られていないポップミュージックについて、言葉を尽くして語ってみること。そのことから、いま私たちが生きている時代や社会そのものを考える思考を導きだすことができないだろうかという、ある意味で非常にクラシカルなポップカルチャー言論を試みたのが、この書籍であると言えると思います。

文中に登場するミュージシャンたちは、程度の差こそあれ、今の日本社会においてはマイナーな人々ばかりです。ヒットチャートで馴染みのある名前は、まったくと言っていいほど話題に上がっていません。このように書くと、まるで「分かる人だけに分かればいい」という狭量な姿勢で書かれた本であるかのように思えるかもしれませんが、私にとって本書は、「インディ・ミュージック」にまったく親しみが無い人々にも、いやむしろ親しみが無い人々こそが楽しめるものであるように思います。社会を経済的に揺るがすような巨大な音楽たちが取りこぼしてしまうような、人々の小さな感情や細やかな気持ちを「インディ・ミュージック」に見出したいという想い。メジャー市場では塗りつぶされてしまう社会性や政治性を、「インディ・ミュージック」が置かれた現場から考えたいという切実さ。そういった、文化に触れる時に誰もが抱く好奇心や情熱のようなものが本書には詰め込まれており、「インディ・ミュージック」がそういった感情に十分応え得る文化であるということを、その音をまったく聴いたことが無い人々にも感じさせるような書籍であると思うのです。


(評者:ジュンク堂書店池袋本店 芸術書担当 下田裕之)

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