書店員レビュー一覧
丸善・ジュンク堂書店・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。1~20件目をご紹介します。
書店員:「丸善 丸の内本店」のレビュー
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黒田官兵衛・長政の野望 もう一つの関ヶ原 (角川選書)著者:渡邊大門
播磨の国でもっとも有名な戦国武将
2014年の大河ドラマの主人公黒田官兵衛は、私の郷土播磨の国でもっとも有名な戦国武将といえる。
有名だといってみたものの、司馬遼太郎の「播磨灘物語」を高校生のころに読んだだけで、意外と何も知らないことに大河ドラマを見ていて気づかされた。そこで著者が播磨の守護赤松氏の研究に実績があるということで、本書を読んでみた。
まずわかったことは、史料が乏しさゆえに黒田官兵衛、そして黒田氏についての研究がそれほどなされていないということだ。有名な史料として『黒田家譜』があるが、17世紀後半に黒田家の正史として編纂されたもので、先祖である黒田官兵衛がかなり美化されているようで、信頼のおける1次史料としては扱えないようである。そのなかで天下分け目の戦いとして知られる関ヶ原合戦については近年一次史料を用いた研究がなされるようになっており、本書は副題にもある通り、関ヶ原合戦前後における黒田官兵衛・長政親子の動きを追うことが中心になっている。
官兵衛は豊臣氏に従うことで姫路の一城主から、豊前に大きな領地を得ることになる。その一方で息子長政は家康に近づき、関ヶ原合戦では重要な役回りを演じ、合戦後には筑前の大大名となることになる。彼らの動きをみていると、大河ドラマにもしばしばでてくる、「全ては生き残るため」というセリフに凝縮されているように思われた。
(評者:丸善丸の内本店 人文書担当 喜田浩資)