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書店員レビュー一覧

丸善・ジュンク堂・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。120件目をご紹介します。

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ジュンク堂 池袋本店店員

書店員:「ジュンク堂書店池袋本店」のレビュー

ジュンク堂
ジュンク堂|池袋本店

指を置く 佐藤 雅彦 (著)

指を置く

メディアテクノロジーの根幹に関わるかもしれない新たな可能性

「指を置く」。一体何のことでしょうか。本書の表紙には、「指を置くことで、解釈が変わる」ということばが記されています。そして裏表紙には、瓶の中に赤いボールのようなものがヒモでぶらさげてある様子が描かれた奇妙なイラストがあり、その中央部には「i」という文字がポツンと書かれています。そしてそのイラストの下には、「iの上に人差し指を置いてください」ということばが添えられています。この表紙を見ただけでこの本が一体何の本なのか理解できる人は、ほとんどいないでしょう。それもそのはずで、本書は「メディアへの新しい関わり方」、それもこれまでに類書が書かれたことが無いような関わり方を、読み手に提示する本なのです。

では、「メディアへの新しい関わり方」とは、一体どんな関わり方なのでしょうか。本文中の記述を借りるなら、それは「メディアの中の出来事が自分事になってしまう」関わり方である、ということになります。人間はメディアを鑑賞する際、「自分自身」の存在を捨象し、そのメディアに意識を没入させることがほとんどです。本しかり、絵画しかり、映画しかり。しかし本書で提示されるイラストたちに、指示通りに「指を置く」ことをしてみると、あたかもそのイラスト内で起きている出来事に、自分が関与しているような意識にさせられてしまうのです。捨象されるはずの「自分自身」が、鑑賞対象であるメディアの一部になってしまうような不思議な体験が、「指を置く」ことで表出します。

先述した裏表紙のイラストに、「指を置く」ことをしてみましょう。瓶の向こう側にある、触れられないはずのボールを、あたかも自分がヒモでぶらさげているような、不思議な感覚に捉われます。自分の身体を、PCキーボードでのデータ入力のような単なるデバイスとしてではなく、メディアの構成要素の一部として用いるような、新しいメディア体験。これからのメディアテクノロジーの根幹に関わるかもしれない新たな可能性を、本書は提示していると言えるでしょう。


(評者:ジュンク堂書店池袋本店 芸術書担当 下田裕之)

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