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書店員レビュー一覧

丸善・ジュンク堂・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。120件目をご紹介します。

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ジュンク堂 MARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店店員

書店員:「MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店」のレビュー

ジュンク堂
ジュンク堂|MARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店

泡坂妻夫 からくりを愛した男 総特集 (KAWADE夢ムック)河出書房新社編集部 (編)

泡坂妻夫 からくりを愛した男 総特集(KAWADE夢ムック)

俺の中2病

泡坂妻夫を初めて読んだのは中学2年の時。たまたま買ったアンソロジーに短編「紳士の園」が収録されていたのだ。
ユーモアあふれるドタバタした展開をげらげら笑いながら読みすすめ、最後の一文まで来たとき。脳の中で何らかの物質が分泌される「ドバッー」という音が聞こえ、ひっくり返った。そのまま一週間くらい、何も本を読む気になれず、呆然と過ごした。
それまでも横溝正史や島田荘司の小説を読むたびに脳内が快感で満たされるのを感じていたが、ここまで強烈なものは初めてだった。
一週間たったところで、あの「ドバッー」は何だったのだろうと、おそるおそる「紳士の園」を読み返し、やはり最後の一文で「ドバッー」が来た。
そんなことを何度か繰り返してから、泡坂妻夫の他の作品も読んでみようと、近所の本屋で短編集『亜愛一郎の転倒』を買ってきた。一番最初の「藁の猫」を読むと、最後のところでまたもや「ドバッー」。話を一つ読むたびにのたうち回った。
亜愛一郎シリーズを読んでいる間はずっとそんな調子で分泌され続けた物質ではあるが、その後は出なくなってしまった。

それから正確に25年を経た現在でも、ミステリを読むときにはあの「ドバッー」を期待しているところがある。しかし、全く叶わなかった。
40を目前にしてようやく諦めた。
あれはきっと、14歳のほんの一時期にしか分泌されないものだったのだろう。むしろそのような絶妙なタイミングで泡坂妻夫に出会え、あんな体験ができたことを感謝すべきなのだ。

今回の『文芸別冊 総特集・泡坂妻夫』。
店の子から、こんな本が出てますよ、と教えられるまで気づいておらず、心の中で「うぎゃー」とさけびながら慌てて買いに走った。
表紙を見るとなんと、泡坂夫人と島崎博の対談を収録! なんとなんと。
我々読者よりももっともっと深く、家族から愛されていた様が語られている。帰りの電車の中で読みながら涙がこぼれた。脳内で物質が分泌されなくなった代わりなのか、最近は涙腺がゆるくて困る。

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