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書店員レビュー一覧

丸善・ジュンク堂・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。120件目をご紹介します。

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ジュンク堂 難波店店員

書店員:「ジュンク堂書店難波店」のレビュー

ジュンク堂
ジュンク堂|難波店

マルクスとハムレット 新しく『資本論』を読む 鈴木 一策 (著)

マルクスとハムレット 新しく『資本論』を読む

ハムレットの煩悶、マルクスの共感、そして『里山資本主義』

ハムレットは、父王の死の真相を最後まで知らなかった。読み込むほどにそのことを確信すると、著者は言う。「亡霊」の言葉はそれほどに不明確で、「亡霊」の存在そのものが、疑わしいのだ。ハムレットは復讐を逡巡しているのではなく、疑いの前に悶えているのだ。
 マルクスは、商品の価値を「価格」に汚染されない「抽象的人間労働」に還元しようとするが、何処まで行ってもそれは「価格」に裏づけられてしまう。マルクスもまた、価値という「亡霊」の前に悶え続けたのだ。
 シェイクスピアの愛読者であったマルクスは、ハムレットに衝撃を受けた。その衝撃は、一方では、ハムレットの中に「亡霊」を前に悶える自分自身を見出したことによる衝撃だったかもしれない。だが一方それは、「怪物退治の英雄」ヘーラクレースが「浮き世をはいまわるさすらいの神」マーキュリー(=ヘルメス)に、ローマ的な合理的知性が既に征服したはずのケルト的な未開の自然に出会った際の衝撃でもあると、著者は見立てる。
 マルクスもまた逃れられなかったローマ的なヘーラクレース性は、合理主義、制圧主義、分業主義であり、今日のグローバリゼーションに通じる。それに対してケルトのマーキュリーは、兼業、氏族共同体に親和性がある。
 完全無農薬農業の汚物・異物・害虫・雑草、「里山資本主義」の材木の屑、そういった資本ならぬ元手から出発するマーキュリー的実践に、著者は、グローバリゼーションの袋小路を突破すべく動き始めた現代世界の逆流を見る。そして、その逆流を照らし出す作品こそ『ハムレット』である、と結ぶ。

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