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書店員レビュー一覧

丸善・ジュンク堂・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。120件目をご紹介します。

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ジュンク堂 難波店店員

書店員:「ジュンク堂書店難波店」のレビュー

ジュンク堂
ジュンク堂|難波店

北の思想 一神教と日本人 富岡 幸一郎 (著)

北の思想 一神教と日本人

「温暖化」した言論状況にあって、噛みしめたい言葉

日本の「近代化」とは、端的に言って、西洋文明の受容である。だが、その現実は欧米の「文明」の上澄みの部分の受容であり、根本の精神なるキリスト教は、一部の例外を除いて無視された。
 明治期の例外である内村鑑三、新渡戸稲造らは、札幌農学校で信仰を得た人たちだ。人間的な幸福や人間同士の公平を求める水平的な(ホリゾンタル)思考ではなく、一神教の神を求める垂直的な(ヴァーチカル)思考は、厳しい北の風土でこそ育まれた、と富岡は見る。「北の思想」と名付けられた所以である。
 そうした西洋文明の「根本の精神」の受容は、全き「西洋化」を意味するのではない。内村は『代表的日本人』、新渡戸は『武士道』と、共に英語で卓越した日本人論を書いている。それらは、一神教徒の「集中する力」ゆえの内省であった。
 また、内村は「デンマルク国の話」で、新渡戸は『農業本論』で、共に日本が「農本国」として歩むべきことを主張し、西洋の物質文明と商業主義に偏った日本の近代化を批判している。
二人の信仰は、期せずして、西洋近代が人間中心主義に陥りキリスト教信仰から離反していったことを徹底的に批判したキルケゴールに、通底している。そのキルケゴールの思索・信仰を真正面から受け止めたのは、哲学者でもなく宗教家でもなく、自らの死に逃れようも無く直面した学徒出陣兵たちであった。
“人類を貫く精神の運動に、唯一なるものを求める方向性は決定的な重要さを持ってきた”。
「温暖化」した今の言論状況にあって、富岡のこの言葉を噛みしめたい。

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