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書店員レビュー一覧

丸善・ジュンク堂書店・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。120件目をご紹介します。

検索結果 100 件中 1 件~ 20 件を表示

ジュンク堂書店 三宮店店員

書店員:「ジュンク堂書店三宮店」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|三宮店

帰らざる夏 (講談社文芸文庫)加賀 乙彦 (著)

帰らざる夏(講談社文芸文庫)

夏の朝の夢魘のように

 あえて言い切ってしまおう。これは戦争状態における、エリート軍人候補養成機関である陸軍幼年学校を舞台にした、究極のBL(ボーイズ・ラブ)小説である。もちろん軍事施設が専らの舞台であり、軍隊用語や古風な言い回しなど読み進めるのにハードルが高い箇所も有るにはある。が、それさえ乗り越えれば「萌え」ポイントは点在する。

 絶対的なものとして教えられ、自らも堅く信じて疑わなかった信条がある日突然、全否定され、「無かったこと」にされてしまった場合、私たちはどう行動するのだろう。それが個人的なものではなく、全国民的なものであった場合は。天皇崇拝という金科玉条だけを携えて臨む、戦場という極限の状況の下で、年少の青年兵士同志の間に友情や憧憬の念を超えて究極へと突き進む恋情が芽生えたとしても不自然ではないだろう。 
 「戦争」という重過ぎるテーマを「正確に」体感することは、戦後七十年を経た現在に生きる私たち多数には難しくなってきている。戦争の悲惨さは疑うべくもないが、生身の人間として、徹底した軍事教育を受け、戦場へと喜び勇んで出て行こうとする若者たちの心情、思想、欲求を著者はありのままにさらけ出している。
 戦時下で交わされる彼らの恋情は常に死と隣り合わせで、そのコントラストは幻想の花びらが散りゆく様を思わせ、そこだけが違う世界であるかのようだ。そして幾分かロマン主義的、耽美的に過ぎる成りゆきは、この「戦争」というものすべてを滑稽化しようとする著者の企みだとも思えてくる。

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