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書店員レビュー一覧

丸善・ジュンク堂・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。120件目をご紹介します。

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ジュンク堂 難波店店員

書店員:「ジュンク堂書店難波店」のレビュー

ジュンク堂
ジュンク堂|難波店

ホンのひととき 終わらない読書 中江 有里 (著)

ホンのひととき 終わらない読書

女優さんらしい、大胆で、真実なことば

中江有里さんは、女優さんである。女優さんの仕事は、脚本(ホン)を読むことから始まる。脚本を読み、役柄の姿かたち、声や歩き方などを想像して、立体的にしていくのが、「役作り」だ。脚本には、「具体的な指定はない方が多い」と、中江さんは言う。自身脚本家でもある中江さんは、シナリオを書くに当たって「シンプルであること」を心がけている。書きすぎると、演じる俳優の想像力を縛ってしまうからだ。書かれていない部分のために、俳優は、想像力を駆使する。
中江さんは、脚本以外の書物(ホン)を読むことも、大好きである。人がページを開いてくれるその時までじっと待ち続けている、我慢強く受動的な「本」に対して、本来内向的だという中江さんも、こと読書に関しては、自分から迫っていき、追い求めて、その世界に割って入るという姿勢で臨む。
“自分にとって必要な本に巡り合うために、今日もあらゆることに引っかかり、書店を回遊しよう。当たり前だが、指をくわえて待っているだけでは、人にも本にも巡り合えない。”帯に書かれた「ああ、もっと読みたい」という中江さんの吐息が、「震え」のように伝わり、読む者の心を揺れ動かす。「もっと読みたい」という気持ちが、伝染する。
女優の仕事と読書は、中江さんの中でしっかりと繋がっているのだと思う。読書もまた、「役作り」同様、想像力を駆使して行間を読む作業であり、読者一人ひとりの頭の中に、本の世界を構築、上演することだからだ。
無類の本好きで知られた、同じく俳優の児玉清さん。中江さんの読書の師、テレビ番組「習慣ブックレビュー」で長くご一緒された児玉さんも、おそらくそうだったのだろう。
中江さんは、読書について大切なことを繰り返し言っている。
“本は「読んですぐ」ではなく、長い時間をかけて染み込んでいくもの”、“読書はタネです。タネはまかなければ、芽は出ません。読書のタネは植物の種と似ていますが、ひとつ違う点があります。それはまいてから、いつ芽が出るかわからないところです”。
本は、知らず知らずのうちに、読む者の身に、心に染み込み、一人ひとりをかたちづくっていく。
読み進むうちに、ぼくたちは、中江さんの、女優さんらしい、さらに大胆な、真実であることばに出遭う。
“小説はあらゆる経験の宝庫だ。つまり現実とは、小説で経験した「記憶の再生」なのだ”。
読書によってかたちづくられた身と心で、ぼくたちは、現実を生きていく。読んだ本が上演される舞台は、読者一人ひとりの「人生」なのである。

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