書店員レビュー一覧
丸善・ジュンク堂書店・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。1~20件目をご紹介します。
書店員:「ジュンク堂書店難波店」のレビュー
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ハムレットの大学 岡山 茂 (著)
翼となって私たちの精神を解き放ち、扇となって埋もれ火を掻き立てる書物
21世紀を迎えた今、世界の大学は、「グローバル企業」の下請け機関となることによって、命脈を保とうとしている。
大革命期にその源泉を中世に持つ大学をすべて廃止してしまい、世界最古のパリ大学も未だ分割されたままであるフランスでは、エリート養成機関である「グランド・ゼコール」が益々その力を増し、ナポレオンへの抵抗の中で「学生を学問に目覚めさせる」ためにベルリン大学を創設したドイツの大学理念も、変節した。イギリスではオックスフォード、ケンブリッジの伝統が「サッチャー改革」によって破壊され、日本の「大学改革」も、それらの国々同様、「アングロ・サクソン・モデルの戯画的コピー」でしかない。
だが、今ほんとうに求められているのは、「グローバリゼーション」にふさわしい大学ではなく、「グローバリゼーション」そのものを問い直すことのできる、デリダの言う「条件なき大学」である。
ハムレットのように、自らは死しても、民衆を守ることのできる大学なのだ。
マラルメは、ハムレットをこう評した。“英雄がいる―他はすべて端役だ。彼は歩きまわる、ただそれだけだ。自分自身という書物を読みながら。”
そうした大学の闘いに参戦すべき書物を、著者は次のように美しく表現する。
“それらのページは、翼となって私たちの精神を解き放ち、扇となって埋もれ火を掻き立て、私たちにふたたび情熱を見出させてくれるのです。”
そして、そうした書物と出遭うことのできる場、それが大学なのだ、と。