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書店員レビュー一覧

丸善・ジュンク堂・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。120件目をご紹介します。

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ジュンク堂 難波店店員

書店員:「ジュンク堂書店難波店」のレビュー

ジュンク堂
ジュンク堂|難波店

歴史に学ぶな 鈴木 邦男 (著)

歴史に学ぶな

失敗の「体験」からこそ、大切なことを学べる

「女子大生、OLがカレシにしたい『歴史上の人物』」ベスト3は、坂本龍馬、織田信長、土方歳三だという。鈴木邦男さん自身も、右翼活動家であった若かりし日々、土方歳三も魅了された。対する新左翼陣営は、自分たちを坂本龍馬に重ねあわせていた。だが、それらは、司馬遼太郎が小説に描いたヒーローである〈坂本龍馬〉であり〈織田信長〉であり〈土方歳三〉なのだ。
司馬遼太郎が『竜馬がゆく』を書くまで坂本龍馬は無名の人物だったし、織田信長は大量殺戮を指揮した(今なら)凶悪犯罪者、土方歳三も維新の志士を殺しまくり、仲間も粛清したテロリストである。 
小説や映画に描かれた〈歴史〉や人物像は、実際の歴史からは大きくかけ離れている。だから、鈴木さんは「歴史に学ぶな」と言う。おそらく真意は、「〈歴史〉に学ぶな」だ。
今特に鈴木さんが「〈歴史〉に学ぶな」と訴える第一は、戦争である。今、映画やドラマは、「真の勇気が試された!」「極限状態でも愛があった!」と、救いや希望や愛を中心テーマに〈戦争〉を描く。だが、実際の戦争は、”ひたすら暗く、残酷で救いがない”。何人もの漫画家がさまざま立場で「体験」した戦争を、さまざまな視点で描いている『漫画が語る戦争』(全2巻 小学館クリエイティブ)を読んで、鈴木さんは改めて強く思った。そして、「体験」に基づいた戦争の実態を、もっと広く伝えることが、メディアの責任と痛感した。
今、そう遠くない過去に日本を破滅に追いやった「思い上がり」が再び頭をもたげている。「中国人と話す必要はない」「韓国人のことは絶対に理解できない」、「妥協するな」、「戦争も辞さずの覚悟でやれ」、と好戦的な本が、書店には溢れている。“出版社に良心はないのか。売れさえすればいいのか”という鈴木さんの糾弾を、ぼくたちは真摯に受け止めなくてはなるまい。他国の文化・歴史・主張を尊重しない「思い上がり」は、再び、国を滅ぼす元凶となるからだ。
本当に歴史に学ぼうと思うなら、日本が失敗し、負けた歴史をきちんと学ぶべきだ、「日本失敗史」から教訓を得るべきだ、何よりも、失敗を「体験」した人たちの「重量」を持った言葉が遺され、伝えられるべきだと、鈴木さんは言う。人生も国も、失敗の連続なのだから。

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