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書店員レビュー一覧

丸善・ジュンク堂・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。120件目をご紹介します。

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ジュンク堂 三宮店店員

書店員:「ジュンク堂書店三宮店」のレビュー

ジュンク堂
ジュンク堂|三宮店

容疑者の夜行列車 多和田 葉子 (著)

容疑者の夜行列車

雲をつかむような話

 旅人の「あなた」はいろんな事情があって、目的地に向けて夜行列車に乗りこむ。あるいは乗りこもうとする。乗り合わせた奇妙な乗客とのやり取りや夜見た夢、陥ってしまう妄想が語られる十三章。

 それぞれの章はつながっているのか、いないのか、よく分からない。終章に四人の乗客が出てきて、あ、これは四人おのおのの話が交互に書かれているのだ、と思い読み返すが、どうもしっくりこない。旅の目的地も連続していそうで途中で全く違う地域になったり、逆方向に向かっていったりする。章ごとで人物の特徴や性別、目的地などをメモしてみたが、似ているような、似ていないような・・・・・・本当につかみどころがない。
 それでも懲りずに理屈で説明しようと考える。四人、というのは血液型のことではないか、世界中に四種類しかないABO、ABの四つの型を代表しているのでは、とか、これは「四色問題」、隣り合う全ての地域は四色で区別できる、みたいなヨーロッパのあの辺りの複雑な民族や領土の寓意なのでは、とか。

 やはり違う。そういう話ではない。もっと純粋に、旅先で、早く目的地にたどり着くためにはどう行動すればいいのか、とか、他人に騙されないためにはどう振舞えばよいのか、とか、不安に苛まれた後で、それがちょっとした誤解や見落としの結果であることが判明して胸を撫でおろしたり、その逆で今まで順調に見えていたものが後で思い返してみると、とても恐ろしい事件とすれ違っていたことに気付かされたり、一章ごとに拡がるエピソードにすっぽり浸かって「夜行列車」に乗り込めばいいのだ。慣用句を開いて地の文にまぎれ込ませたことばの違和感を面白がり、カメレオンのように擬態する「あなた」=「容疑者」の変装を見破って、いっしょに追跡するのだ。そしてもう一つの可能性に気付いた。

 「あなた」は文字通り、この本を読む読者ひとりびとりのことだったんだ、なんだ、そうだったんだ、それでよかったんだ、と。
 

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