書店員レビュー一覧
丸善・ジュンク堂書店・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。1~20件目をご紹介します。
書店員:「ジュンク堂書店大阪本店」のレビュー
- ジュンク堂書店
- ジュンク堂書店|大阪本店
モノグラム殺人事件 ソフィー・ハナ (著)
39年ぶりに灰色の脳細胞を働かせるときがきた
ロンドンの行きつけのレストランで夕食をとろうとしていたポアロは、怯えた様子で店に飛び込んできた女性と出会う。彼女は“自分は殺される”、そして殺されることは正当な処罰である、と言い残し逃げるように去ってしまう。同じ夜、豪華ホテルで3人の人間が別々の部屋で殺害されているのが発見される。死体は犯人の手によって整然と整えられ、しかも口の中には“PIJ”のモノグラムつきのカフスボタンが入れられていた。ポアロと友人でスコットランドヤードの刑事キャッチプールは事件の捜査を始めるが・・・。PIJのモノグラムは誰を指しているのか。そしてポアロがレストランで出会った女性と3人の殺害には関係があるのか。やがてポアロ達は殺された3人を結びつける、ある田舎の村で起こった陰惨な出来事にたどりつくのだが・・・。
アガサ・クリスティーの名探偵ポアロシリーズ、39年ぶりの新作長編がこのモノグラム殺人事件である。シリーズ初の続編を執筆したのはイギリス人作家のソフィー・ハナ。今作の語り手、かつ相棒はポアロと同じ下宿先に住むキャッチプール刑事で、初登場の新キャラクターである。控えめで自分の推理力に自信がないキャッチプールと、素晴らしい知識と観察力、そしてたっぷりの自信をもったポアロのコンビが進めていく推理劇が楽しめる。冒頭の謎の女性との遭遇とショッキングな殺人事件、徐々に明らかになっていく過去の悲劇との関連性、証言者達の何重もの嘘また嘘、とストーリーも最後まで気の抜けない展開となっている。ポアロシリーズのファンは勿論だが、シリーズをほとんど読んだことがない人でも一気に惹きこまれてしまう作品ではないだろうか。ちょっとポアロに呆れられながらも一生懸命事件の真相について頭をひねるキャッチプール君と一緒に、あなたも“小さな灰色の脳細胞”を働かせてみるのはいかがだろう。