書店員レビュー一覧
丸善・ジュンク堂書店・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。1~20件目をご紹介します。
書店員:「MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店」のレビュー
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- MARUZEN&ジュンク堂書店|梅田店
都筑道夫ドラマ・ランド 完全版 上 映画篇 都筑 道夫 (著)
衝撃
学生の頃、東京へ旅行ついでに中野の古本屋へ立ち寄った。
何を探すというわけでもなく棚を眺めていると、日活映画「俺にさわると危ないぜ」の台本が目に入った。
これは都筑道夫の「三重露出」を映画化したもので、たまたま直前に京都テレビで雨傘番組として放映されていたものを録画して見ていたのだが、原作を読んでいる・いないに関わらず、頭を抱えてしまうようなできばえで、ビデオは一度だけ見て消去してしまった。
当然「おやっ」と思って手には取ったが、3000円という値付けを見て「まあ、つまらない映画だったし」と、そのまま棚へ戻した。
ところが!
帰宅後に調べてみると、実は脚本に都筑道夫本人もクレジットされているではないか。それなら買っておけばよかった。都筑道夫作品のコンプリートを目指しているわけではないので、別に持っていなくても差し支えないのだが、こんな珍品に本人の筆が入っているとなれば、やはりコレクションしておきたいではないか。
その後、古本屋に映画台本のコーナーがあるとずっと「俺にさわると危ないぜ」を探し続けたが、見つかることはなかった。DVDが発売されたときも買ってきて、改めて「わけのわかんない映画だなあ」と思いつつ、あのときに台本を買わなかった悔しさを思い出していた。
と、20年ほどそんな日々を過ごしていたところ、本書『都筑道夫ドラマランド完全版』が刊行された。
都筑道夫が執筆した伝説的なシナリオが並ぶ中に、当然「俺にさわると危ないぜ」も収録されている。こんな本が出てしまったら、もはや珍品ではないのだが、ほかのシナリオは傑作だらけなのだし、買うしかない。
買って帰る電車の中、解説を読んでいたところこんな一文があった。
「実質的には都筑道夫が執筆していない名義のみのもの」
!!!
なんてこった! どうしてくれる、俺の20年!
と、衝撃を受けつつも、繰り返しますが、ほかのシナリオは傑作だらけなので、買って損はありません。