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書店員レビュー一覧

丸善・ジュンク堂・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。120件目をご紹介します。

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ジュンク堂 三宮店店員

書店員:「ジュンク堂書店三宮店」のレビュー

ジュンク堂
ジュンク堂|三宮店

眠りなき狙撃者 (河出文庫)J=P.マンシェット (著)

眠りなき狙撃者(河出文庫)

小説は一幅の絵画のように

 マルタン・テリエの仕事は殺し屋である。日常的に、次々と依頼を受けては人を殺す。それが仕事だから。仕事のために恋人を捨てる。しかし猫は一緒に連れていく。テリエは引退するつもりだ。仕事の依頼主は彼を引き留め、殺した相手の仲間からは復讐を宣告される。追手は徐々に忍び寄り、テリエの行く手を責め苛んでゆく。新しい人物が紹介されるたびに誰かが殺される。文字通りの血みどろの戦いだ。追い詰められたテリエは最後の反撃に出る。いつもと同じ腹ばいになって銃を構える「伏射の姿勢」で・・・・・・
 全く贅肉のない、引き締まった「体脂肪率ゼロ」の文体を無味乾燥なものから救っているのは、細部の描写、特に行動する者の目線に映る細部への偏執的とも思えるほどのこだわりだ。彼らが使用する、車や銃の名前から人物の髪、眼の色、肌のつや、装身具の種類、化粧品や香水のブランド名に至るまで、それら「モノ」の名前が彼らの性格や立居振る舞いを代弁しているかのようだ。そして感情を移入するひまもなく場面は進行し、次々と人が死んでゆく。その死があまりに多すぎ、生々しさや悽絶さを通り越して、一種の寓話や神話のように思えてくる。全編を支配する、殺伐とした荒寥感と合わさってひとつの宗教的な絵画へと固着するのだ。そこにあるのはテリエの骨身に沁みこんだ、「伏射の姿勢」である。

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