書店員レビュー一覧
丸善・ジュンク堂書店・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。1~20件目をご紹介します。
書店員:「ジュンク堂書店那覇店」のレビュー
- ジュンク堂書店
- ジュンク堂書店|那覇店/MARUZEN那覇店(文具)
イスラムの真実と世界平和。 イスラムへの誤解が、世界を不安にさせている。 45分でわかる! 内藤 正典 (著)
アッサラーム・アライクム=あなたに平和を
現在同志社(大学院)で教鞭をとる内藤正典氏。メディアのインタビュー等でもわかりやすい解説が評判です。
本書は2009年、高校生向けに行われた講演を書籍化したものです。
パキスタンでマララさんがタリバンに撃たれた事件(2012年)も、アルジェリアの人質事件(2013年)も、「イスラム国」の台頭も、シャルリー・エブド事件も、そして今起きているシリア人質事件も、まだ起きる前の講演です。
わかりやすく、面白く、人間として身近に感じられる話もたくさん出てきます。
恐ろしい緊張感と、胸が張り裂けそうな情報が飛び交う今このとき読むと、ずいぶん柔らかい本に感じられるかもしれません。
かといって内容が古いのかといえばそんなことは全くなく、むしろここまでこじれてしまったのはなぜなのかを少し立ち止まって考えるのに最適なのではないかと思います。
イスラム教のことだけでなく、ムスリム(イスラム教徒)の文化やものの考え方など、異文化として知っておくことは決して損ではなかったはずですし、これからでも遅くはないはずです。
対話をして、共存していくためには必要なことです。
さらに分かることは、タリバンや「アル・カイダ・なんとか」やイスラム国といった、原理主義とか過激派といわれる勢力は、結局のところ本当のムスリムからすれば到底認めることのできないことをやっているので、それを「イスラムだ」と思ってしまってはいけないのだということです。
まずは元々のイスラム(語源は“平安”だそうです)のことを知り、その文化で生きている人たちのことを知ることが、差別や憎悪の火を消していく恵みの雨を呼ぶことにつながるのかもしれません。
社会科学書担当 成田すず