書店員レビュー一覧
丸善・ジュンク堂書店・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。1~20件目をご紹介します。
書店員:「丸善札幌北一条店」のレビュー
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機龍警察未亡旅団 (ハヤカワ・ミステリワールド)月村 了衛 (著)
ずっと読んでるのに龍機警察か機龍警察かでいつも分かんなくなります。
シリーズものの宿命か、どの巻から読んでも面白いよ!とはいい難くなってきた四作目。だがそれは内容の円熟と登場人物の歴史の面白みを意味することであるので、シリーズ読者には問題なし。
とはいえ今作は今までよりテーマが深刻、かつ暗い。語り部の視点変更も多めで
既存巻より読了まで時間がかかってしまった。
今回の「主な敵」はチェチェンのテロリスト集団。
全員女性で構成されており、大儀があれば少女を自爆テロに使うこともいとわない。明らかに実在のテロ集団「黒い未亡人」がモデル。
同時期にリアル自衛隊小説「土漠の花」を上梓した著者のこと、龍騎兵(いわゆるロボ的なもの)を除けばかなり現代テロ事情に即して書かれている、と思う。
今回の掘り下げられキャラクターはパイロットでも沖津でもない、ちょい脇役的な由起谷と城木だが、テロリストのカティアに全部持ってかれた感じ。最後の手紙なんかもぅ涙ものです。
皆さんお楽しみの格闘シーンは今までで一番充実しているし、一作目から見え隠れしていた「真の敵」のごくごく一部が垣間見える。次回作では大きくストーリーが展開するのでは?と思わせるターニングポイント的な内容なのだが・・・・
うぐぐっ、正直に言うと個人的には今作はエンターテイメントとしてはあまり楽しく読めなかったのだ。
テロリズムのドグマを妄信し、自爆することで神に召されるのを心から楽しみにしている少女たちが不憫で不憫で(思い出してもうウルウルしてしまう)、姿のコーヒー談義も息抜き程度、ページをめくるのが辛かった。
禍福は糾える縄の如し、テロリズムに疑問を呈し孤独を選んだカティアくらいは
このあと救われてほしい。
「ロボットっぽいのが出てくるSFアニメっぽい作品」を期待する読者をふるいにかける罪深い作品。つまりクオリティは高く、前四作はこれを書くための下地だったのでは、とも思わせる力作。テロリズムに関しての自分の無知を考えさせられた。