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書店員レビュー一覧

丸善・ジュンク堂書店・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。120件目をご紹介します。

検索結果 100 件中 1 件~ 20 件を表示

丸善 札幌北一条店店員

書店員:「丸善札幌北一条店」のレビュー

丸善
丸善|札幌北一条店

カウントダウン・シティ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ・ブックス)ベン・H.ウィンタース (著)

カウントダウン・シティ(ハヤカワ・ポケット・ミステリ・ブックス)

フーディーニ(人)の異名は「脱出王」らしいですが・・・

ミステリーなのかSFなのか、カテゴライズも無駄な気がする「地上最後の刑事」の続編、三部作の真ん中。
世界があと77日で隕石衝突により壊滅するのが決定している絶望的状況で、もはや刑事ですらない主人公は古い知り合いに夫探しを依頼される。
こんな自分に何ができるのか?そもそも捜査するのは彼女のために良いことなのか?モヤモヤと疑問を感じつつも結局引き受けてしまうパレス元刑事&フーディーニ(犬)。
世界は前作より一際ディストピア化が進んでおり、インフラは壊滅、ほぼ無政府状態ではあるが、舞台になる架空の街の人々には前作同様、底なしの倦怠感に包まれており世紀末的暴力描写はあまり無い。

本作は二本の軸で形成された作品である。
一本目の失踪事件の捜査はそれなりに謎はありつつも強烈などんでん返しも無く意外とあっさり終了。事件は読者にこの世界を見て回らせるための物でしかない。
主軸は別のもう一本、妹との絆、関係性の変化であり、これは次回最終巻にストーリーを繋ぐための布石であろうと思われる。
ダメな妹のおまえは何があっても自分が最後まで守ると、幼いころ約束したパレスは、その妹が世界を救うことができる組織のメンバーかもしれない、なんて与太話は前作から続けて信用できない。でも、もしかして、ひょっとしたら・・・で幕引き、三巻に引っ張る。

前作と比べてストーリーの足場は弱い。登場人物も印象が薄いし洒落たせりふ回しも少ない、完全に繋ぎの二巻目である。が、ぼくは前作が好きすぎて若干客観性を欠いており、この世界の雰囲気を感じられるだけで幸せ。
これはもう大人の童話である。パレスがフーディーニ(犬)と自転車で移動する描写なんて完全にファンタジー、幻想小説めいていて1980~1990年ころのフランス映画のようでもある。
このシリーズは事件がどうしたこうしたなんかは些細なことで、凄まじいスピードで否応なしに変化してゆく毎日と、残りの日々を生きてゆくにはそんな世界を受け入れるしかない人々やパレスの「日常との乖離」を読む小説だと感じる。
最後はどう始末をつけて終わるのやら、最終巻がもし噴飯ものの結末だったとしても読まざるを得ない使命感を感じる。※この辺も客観性を欠いております
これが「あなたが本を選ぶのではなく、本があなたを選ぶのです!!」ってやつか?
うまく説明できないが本に取りこまれた不思議な感じ。

前作もそうだったが、今作は更に「ミステリー好きの皆さんにお勧めです!!読んでネ!!ぶいっ!!」と全然言えないところが困った変なミステリーである。
でも読んでみようかな、と思った奇特な方がいたら間違っても本作を最初に読んではいけない。前作「地上最後の刑事」は書店にて絶賛発売中。

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