書店員レビュー一覧
丸善・ジュンク堂書店・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。1~20件目をご紹介します。
書店員:「ジュンク堂書店 大分店」のレビュー
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幸いなるかな本を読む人 詩集 長田 弘 (著)
本を友人として書かれた本
読書が好きで本が好きな人ならば、この本のタイトルだけで胸の中が暖かくなるのではないでしょうか。
詩人、長田弘さんが「心から離れない本」25冊にそれぞれ詩を寄せています。
鴨長明「方丈記」、中島敦「悟浄出世」、夏目漱石「草枕」
アルデンセン「雪の女王」、「アラビアンナイト」、カフカ「日記」
などなど。
タイトルだけ並べると、まるで国語の教科書に載っているものか学習教材か、という難しそうなものばかり。25冊の本にはどれも一度読んだだけでは到達できないそれぞれに違った深さ、高さ、遠さがあります。
長田弘さんはこれら心から離れない本について、「読んでから後、いくども心のなかに抜き書きをかさね、書き込みを繰りかえし、記憶の行間に立ち止まり、またその余白に入り込み、目をつむり、そうして遠く思いを運ばれて、いつかじぶんで親しくつくりかえてきた」といいます。
すでにご存知の本には長田弘さんの新しい物語が添えられ、まだ読んだことのない本には正面とは別の入り口が開かれます。
一度読んで頂きたいのは梶井基次郎「檸檬」に向けられて書かれた「檸檬を持っていた老人」です。
本を読むことを幸いと思う多くの人は、多かれ少なかれ、自分が味わった幸いを人に勧めてしまうもので、「これ面白かったよ」「あれいいよ」「そうでしょそうでしょ」というやり取りで日常的に分かち合っています。
名作や古典に寄せられた25篇の詩、として読むこともできますし、長田弘さんの最も大切な25冊のお勧め本、と受け取っても、どちらにしても幸いであり、受け取ることが出来るように思います。