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書店員レビュー一覧

丸善・ジュンク堂・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。120件目をご紹介します。

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書店員:「書標(ほんのしるべ)」のレビュー

ジュンク堂
ジュンク堂|丸善ジュンク堂書店 書標編集室

あの素晴らしき七年 (CREST BOOKS)エトガル・ケレット (著)

あの素晴らしき七年(CREST BOOKS)

丸善ジュンク堂書店のPR誌「書標」2016年7月号より

「わしは人生を愛しとる」
ホロコーストを生き延び、回復しようのないがんに侵されながらも力強い希望を失わずに生きた、ケレットの父の言葉である。
本書の舞台は戦時下のイスラエル。テロのさなかで息子の誕生を迎えたユダヤ人作家ケレットは、父の死が訪れるまでの七年間を自伝的に綴る。
「もし人生の質が良ければそりゃ結構。質が悪けりゃ、それはそれで仕方ない。えり好みはせんよ」
舌と喉頭の切除を進んで選択し、クオリティオブライフなどなんだと言わんばかりに前を向く父。そんな父の生き方と、ケレット自身が父となったこととが重なり、彼の〈素晴らしき七年〉を構成しているように思われた。
本書で描かれた、それぞれわずか3、4ページからなる36篇のエッセイは、どれも家族への温かな愛とユーモアに溢れるものだ。しかし、同時に語りの背景に存する過去・現在・未来を通して切り離すことのできない戦争の記憶と暴力の歴史が、もどかしさを伴いながら残酷な冷たさで心を刺しもする。
非日常が日常化していることの異常さを、幼い息子・レヴはまだ知らない。いずれ直面するであろう現実を噛み砕き、〈素晴らしき七年〉は過ぎていく。
ラストの1篇、ミサイルの降る道路脇で、身を屈めて「パストラミ・サンドイッチごっこ」をする一家の姿に、オブライエンの『本当の戦争の話をしよう』を思い出した。
戦時下のリアル、人生を愛するということについて、時に笑い、時に泣きながら考えさせられる1冊である。

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