書店員レビュー一覧
丸善・ジュンク堂書店・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。1~20件目をご紹介します。
書店員:「ジュンク堂書店ロフト名古屋店」のレビュー
- ジュンク堂書店
- ジュンク堂書店|ロフト名古屋店
パンダワールド We love PANDA 中川 美帆 (著)
パンダフル!パンダワールド
人々がパンダを好きな理由の根底にあるのは、フワフワでころころとした愛くるしい姿だが、著者はその魅力だけをクローズアップするのではない。
1章「パンダ大全」では、可愛いだけではないパンダの姿が明らかになる。
特に印象に残ったのは、特徴とされる繁殖の困難さと希少性だ。
発情期の短さと個体数の少なさから、パンダの繁殖は世界的な研究課題とされている。
そう知ると、シャンシャンが自然繁殖で誕生したことには改めて驚く。
また、パンダと人間には政治、経済、文化の様々な面で密接な関連が存在する。
パンダフィーバーがもたらす経済効果は地域振興にもつながり、パンダをモチーフにした文学や芸術も多岐に渡る。
政治や歴史を紐解くと、中国と国際社会との「パンダ外交」の記述は特に興味深い。
なぜパンダが中国からやって来て、帰って行くのかの疑問が解けた。
最終章は「世界のパンダに会いに行く!」と題して、著者がほぼ自費で単独訪問した世界30ヵ所のパンダを紹介する。
アクセス方法やその場所のパンダの特徴・見どころのほか、お土産情報やフードコートで著者が食べたものまで詳しく書かれているので、パンダ好きのガイドブックとしてはもってこい。
全章を通じ、パンダに関する情報がとにかく豊富なことに驚く。私たちが普段メディアで知ることができるレベルを遥かにしのぐ情報量だ。
著者の元記者としての取材力と「パンダフルなパンダ愛」がなせる技だろうか。
2017年に上野動物園でシャンシャンが誕生してから、日本では何度目かのパンダフィーバーが巻き起こっている。
私個人の意見では、パンダは可愛いとは思うが、「なぜそこまで日本人はパンダが好きなのか?」と正直なところ疑問であった。
本書はその疑問に十分に答えてくれるものだった。
ロフト名古屋店 理工書担当 中村