注目作家や著名人に最新作やおすすめ本などを聞く『honto+インタビュー』。
今回は、『シンセミア』『ピストルズ』に続く神町トリロジー完結編
『オーガ(ニ)ズム』を上梓した阿部和重さんが登場。
『シンセミア』『ピストルズ』に続く神町トリロジー完結編『オーガ(ニ)ズム』を上梓した阿部和重さん。これは文学の可能性を追求した純文学作品なのか、それともエンターテイメントのスパイアクション小説なのか。阿部さんにお話を伺いました。
マーベル作品と比較して読んでもらえたらうれしいです。
作家・阿部和重の自宅に血まみれの男が転がり込んできた。その男はCIAのケースオフィサーのラリー・タイテルバウムだった。ラリーと幼い息子を連れ、阿部和重は迫り来る核テロの危機から世界を救えるのか? 20年をかけて完成した神町トリロジー完結編は文学関係者に大きな衝撃をもって迎え入れられた。
「『シンセミア』『ピストルズ』『オーガ(ニ)ズム』、どの作品から読んでいただいてもかまいません。どの順番で読んでも楽しんでいただけると思います」
純文学の作家というイメージの強い阿部さんだが、『オーガ(ニ)ズム』は、リーダビリティが高く、とても「笑える」と評判だ。
「デビュー作の『アメリカの夜』から、笑えるということは自分の身体感覚・日常感覚とマッチしていると思っていました。それに、私が小説を書くきっかけとなった『ドン・キホーテ』(セルバンテス)は小説の元祖のような作品ですが、本当におもしろくて笑える。それでいて多様な可能性を秘めている。私も、その『ドン・キホーテ』を目指して小説を書いているところがありますので、笑えるということはとても大事な要素だと考えています」
地下爆発で国会議事堂が崩落したことにより、首都機能が移転され、新首都となった神町(じんまち)で、代々、「アヤメメソッド」と呼ばれる人心操作の秘術を扱う菖蒲家(あやめけ)。小説家の阿部和重はCIAケースオフィサーに菖蒲家へのスパイ活動を要請され、3歳の息子・映記(えいき)とともに、神町に向かう。神町にはアメリカ大統領バラク・オバマが来訪することになっていた。そこで作家は世界を破滅に向かわせる陰謀に直面する。まるでスパイもののハリウッド映画のようなストーリーだ。
「もちろん、文学として誰も達成していない挑戦をしたという感触はあります。ただ、物語は、まずおもしろいのが前提だと思っていますので、『オーガ(ニ)ズム』もエンターテイメントとして楽しんでいただけるはずだと考えております。また、『オーガ(ニ)ズム』は、ハリウッドのテレビドラマや映画に匹敵するものにしたいと思って書いていました。『アベンジャーズ/エンドゲーム』や『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』『トイ・ストーリー4』などと同じように楽しんでもらえたらうれしいです」
新刊のご紹介
阿部和重(あべ・かずしげ)
1968年山形県生まれ。「アメリカの夜」で群像新人文学賞を受賞しデビュー。『無情の世界』で野間文芸新人賞、『シンセミア』で伊藤整文学賞・毎日出版文化賞、『グランド・フィナーレ』で芥川賞、『ピストルズ』で谷崎潤一郎賞を受賞。その他の著書に『インディヴィジュアル・プロジェクション』『ニッポニアニッポン』『ミステリアスセッティング』『クエーサーと13番目の柱』『Deluxe Edition』『キャプテンサンダーボルト』(伊坂幸太郎との共著)など。
主な著作
バックナンバー
- 【vol.32】川上未映子『夏物語』(文藝春秋)
- 【vol.31】700ニキ『賢者のタイミング 空気は読まずに流れを読む』(KADOKAWA)
- 【vol.30】伊坂幸太郎×朝井リョウ【伊坂幸太郎】『フーガはユーガ』(実業之日本社)【朝井リョウ】『何者』(新潮社)
- 【vol.29】島本理生『あなたの愛人の名前は』(集英社)
- 【vol.28】西村創一朗『複業の教科書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
- 【vol.27】森見登美彦『熱帯』(文藝春秋)
- 【vol.26】辻村深月『かがみの孤城』(講談社)
- 【vol.25】葵わかな『青夏(講談社コミックス別冊フレンド)』(講談社)
- 【vol.24】鳥居みゆき『やねの上の乳歯ちゃん』(文響社)
- 【vol.23】コシノヒロコ『だんじり母ちゃんとあかんたれヒロコ デザイナー三姉妹と母の物語』(マガジンハウス)
- 【vol.22】阿部和重&伊坂幸太郎『キャプテンサンダーボルト』(文藝春秋)
- 【vol.21】安藤忠雄『仕事をつくる(私の履歴書)』(日本経済新聞出版社)
- 【vol.20】栗山圭介『フリーランスぶるーす』(講談社)
- 【vol.19】伊坂幸太郎『ロングレンジ』(幻冬舎)
- 【vol.18】真梨幸子『祝言島』(小学館)
- 【vol.17】阿部智里『弥栄の烏』(文藝春秋)
- 【vol.16】深水黎一郎『ストラディヴァリウスを上手に盗む方法』(河出書房新社)
- 【vol.15】小手鞠るい『たべもののおはなし パン ねこの町のリリアのパン』(講談社)
- 【vol.14】上田秀人『竜は動かず 奥羽越列藩同盟顛末』(講談社)
- 【vol.13】浅田次郎『天子蒙塵』(講談社)
- 【vol.12】けらえいこ『あたしンち』(KADOKAWA)
- 【vol.11】伊東潤『天下人の茶』(文藝春秋)
- 【vol.10】真保裕一『遊園地に行こう!』(講談社)
- 【vol.9】伊坂幸太郎『サブマリン』(講談社)
- 【vol.8】松岡圭祐『探偵の鑑定』(講談社)
- 【vol.7】堂場瞬一『誘爆(刑事の挑戦・一之瀬拓真)』(中央公論新社)
- 【vol.6】山崎ナオコーラ『ボーイミーツガールの極端なもの』(イースト・プレス)
- 【vol.5】安藤哲也『崖っぷちで差がつく上司のイクボス式チーム戦略』(日経BPマーケティング)
- 【vol.4】藤原和博『たった一度の人生を変える勉強をしよう』(朝日新聞出版)
- 【vol.3】伊坂幸太郎『キャプテンサンダーボルト』(文藝春秋)
- 【vol.2】阿部和重『キャプテンサンダーボルト』(文藝春秋)
- 【vol.1】川上未映子『きみは赤ちゃん』(文藝春秋)