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紙の本
幸田露伴とのこころ通う交流
2002/01/09 03:18
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:喫読家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
正直に白状してしまうと、幸田露伴の書いたものはあまり読んだことがない。どちらかというと、多くの作品を読んだことのある幸田文さんの、こわいお父さんというイメージの方が強かった。ところが、小林勇氏の描く幸田露伴はずいぶん気さくで楽しい人だ。
夏も終りに近い或る日の午後、二階の書斎に上っていくと、先生は釣の道具を室一杯にひろげていた。「先生、座敷で釣ですか」と私がいうと、「なにを悪口いうか」と笑った。
(中略)
先生は釣道具をいじりながら、「君は忙しいかい」ときいた。私は「忙しいですね」と簡単に答えた。すると先生はもう一度「忙しいかね」ときいた。私は「どうしてですか」と反問した。「いや、なに、君がよければ釣に連れていってやろうと思うからさ」私は「釣のお供などご免ですよ」と答えた。先生はそれをきくと、むっとした顔をして、「わしは人から釣に連れていってくれと頼まれるが、みんな断わっている」
このあと著者は先生(露伴)に説得され一緒に釣に出かけるのだが、道中のやりとりはやはり落語のような呑気さ。博学で知られる露伴も、酒が入り興が乗るとずいぶんいい加減なほら話をする。
著者の小林勇氏は岩波書店の編集者だが、著者と編集者という関係や親子ほどの年の違いを越え、露伴とは非常に親しい間がらになる。本書は晩年の露伴と知りあうようになってから20年の歳月の交流を綴ったものだが、前半のユーモラスで牧歌的な雰囲気からやがて苦しい戦争の時代にむかう中、二人の絆は次第に深く太くなってゆく。戦争末期、思想犯として囚われた著者小林氏の留置場での拷問の日々、病床の露伴から届いた激励の手紙、敗戦、そして露伴の死。
おそらくこの本には、幸田文さんも(また他の人も)知ることのできなかった、ひとりの友人(人間)としての幸田露伴の姿が、まれな才能を持つ人の手により描かれているように思う。
「蝸牛庵というのはね、あれは家がないということさ。身一つでどこへでも行ってしまうということだ。昔も蝸牛庵、今もますます蝸牛庵だ」
露伴のさりげないことばの数々が頭に残る。
紙の本
編集者から見た露伴
2023/04/01 02:23
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投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
岩波書店に勤めていた著者が、
仕事の上で関わった幸田露伴について
物した本です。
文筆業者が書いたものでヮないせいか、
文章そのものにヮ、取り立てて評価すべき点ヮ
見い出せませんけれど、露伴の人柄が偲ばれる
逸話に溢れた一冊です。
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