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みんなのレビュー9件

みんなの評価3.8

評価内訳

9 件中 1 件~ 9 件を表示

紙の本

玄人としてもがいて生きていく人々

2011/10/27 21:07

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:更夜 - この投稿者のレビュー一覧を見る

「いくらうまくとも、お素人衆の芸は、金を取る玄人の芸とは別でござりまする」(「心残して」)
 
 松井今朝子さんの小説は、ほとんどすべて玄人の世界ではないでしょうか。
学生時代と違って 社会人になってから、どんなに仕事を覚えても、熱心にしても、それだけでは
「良い点数」にはつながらない現実に直面した自分は、やはり給料をもらって働く世界は
なんであっても「頑張れば夢かなう」ではない、ということを思い知らされるのでした。
だからこそ、「頑張れば夢かなう」または、どうすれば夢かなう、上手くいく、金が儲かるといった
ノウハウ本が昔も今もなくなることないのでしょう。

 この本は4篇の物語が収録されています。
どの物語も松井さんお得意の歌舞伎の世界を中心にしていますが、歌舞伎といえば、男だけの世界。
しかし、その影にいる女たちの物語でもあります。
物語に厚みがあるのは、登場人物たちが、いくら才能ある役者であってもどこかしら人間としての
弱みがあり、清廉潔白だけではやっていけない、清濁併せ飲んで初めて玄人の世界を描いているからでしょう。
つまり、手垢にまみれたようなわかりやすいヒーロー、ヒロインは不在なのが松井さんの物語の特徴です。

 亡くなった人気歌舞伎役者そっくりの若い役者をひきぬいて、二代目にさせようとする「似せ者」
幼いころから一緒に役者として狛犬のようだ、と言われながらも、次第にライバルになっていく
正反対のタイプの2人の若い役者を描いた「狛犬」
引退をほのめかす役者に翻弄されるお仕打(歌舞伎の興行師)を描いた「鶴亀」
歌舞伎の唱と三味線をになう囃子方と幕末の江戸の武士を描いた「心残して」

 どの物語も、出てくるのは玄人です。
役者であっても、三味線弾きであっても、裏方であっても、武士であってもなにはともあれ
「これで自分は生計を立てている」という誇りを持った玄人の人々です。
しかし、誇りが故に生ずる葛藤、嫉妬、恋心、迷いも出てくる人々は悩み、そして笑う。
そして生きていく。

 人気役者に似ているから、だけでは似せ者であると同時にいつまでたっても偽物にすぎないそんな葛藤と
それをなんとか持ち上げて興行を成功させようとする者。
身分は武士なのに妙に声が良く、唄が上手くても、やはり歌舞伎の世界ではやっていけないのは事実。
しかし、武士と囃子方では身分が違うのでお互いの世界は違っても唱でつながる武士と三味線の師匠。
人気が出れば出るほど役者は褒められて天狗になってのびる、そして天狗になって叱られて
また、精進してのびて人気になって、天狗になるの繰り返しで、わがままなのか、天賦の才能なのか
わからない役者という稼業。
ひたすら金勘定に邁進して、とにかく人目をひこうとする反面「こうしなければ儲からない」という
固定観念にとらわれて、老獪な役者にその足を見事にすくわれる興行側。

 どの物語もハッピーエンド、アンハッピーエンドかということは関係ありません。
どの物語も、何であっても玄人としてもがいて生きていく人々の生き方を活き活きと
そして 臨場感あふれる喜怒哀楽をくっきりと描いている世界、その過程に艶めかしさと謎と人間臭さをたっぷり堪能できる
世界なのです。
どの物語も終わらせ方が実に余韻たっぷりでありながら潔いのです。その幕引きのうまさも光っています。
「夏の陽はまだまだ沈みそうもない」(「似せ者」)
 
 時代が昔であっても、フィクションであってもその徹底した世界の創り上げ方は非の打ちどころが無いほど、
著者、松井さんの物語は隙がない。いつも背筋をぴんとのばしたような、しゃきしゃきとした
きりりとした、キレのよい文章で大人の玄人の世界を描き出します。
どの物語に出てくるどの人物も、白黒はっきりした人物はいません。
しかし、誰であっても悪者もいない、という松井さんの人生観と人間観察の鋭さと深い考察が見事な
時代小説となって目の前に現れるのです。
このきりり感というのは、他に追従を許さないほど徹底したものでその見事な玄人ぶりに
ひたすら感心するばかりです。

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2009/09/24 15:25

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2008/04/28 12:09

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2009/08/24 22:27

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2022/10/20 22:41

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2007/09/30 01:53

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2009/03/15 13:44

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2012/08/24 16:38

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2014/12/05 09:27

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