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祖父の遺灰を故郷の海に返すために、東江秀二は沖縄に向かいます。そこで、祖父の友人から預かったテープを聴くことになります。そこには語られなかった沖縄のもうひとつの真実がおさめられていました。場所は伊是名島。日本でありながら言葉の通じない人々に対する差別。語られることのないリンチや殺人。戦争の時代の暗黒が淡々と語られています。
前後の秀二の時代(現代)があるからこそ、本文(テープの部分)が際立っています。
年老いていく当時の若者のすごした時代が、哀しく思えてきました。
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主人公の秀二が、祖父の死をきっかけに出向いた沖縄で出くわす、太平洋戦争終結前後の沖縄のとある離島での出来事を吹き込んだテープが物語の大半を占める。
戦争の悲惨さというステロタイプのことばでは表しきれない、凄惨さ、やりきれなさ、人間の業などが丹念に描かれる。
こんな戦争の体験は、われわれにしっかり語り継がれているのだろうかと感じる。
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終戦間際の沖縄諸島での戦争の話。
追い詰められた兵隊の人間模様と葛藤にドキドキしながら引き込まれる。
本当にそうだったんだろうなぁと思える、理不尽な殺人行為。
しかし、殺すことを命じる上官の心境も察することができる。
同じ立場であったら、自分もそうしたかもしれない。
とにかく戦争は人を狂わせている。
終戦を知った後の日本人の返り身の早さというのも、国民性が出ている
気がする。
これ以上、突っ込んで当時の話を知りたいとは思わないが、この小説を
読んで、戦争とはそうだったんじゃないかということに改めて思いを馳せる
きっかけとなった。
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好物のテーマのひとつである太平洋戦争・沖縄戦もの。
大岡昇平『野火』を彷彿とさせるような、乾いてざらざらした死の感覚。裏切りと欺瞞の連鎖。
サディスティックな描写の中に、生の根源に触れるような深みがある。
読み進めるのが苦痛になる人もいるだろうな。「戦う相手を間違えてるんじゃないか」というコメントがぴったりくる気がした。