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紙の本

一応の結末を迎えた『友月編』

2010/02/24 00:34

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る

八朔連大を追い詰めようとする友月に逆転のピンチが訪れる絶望的な展開に、友月家の「血脈」に関わる秘密を絡めて今回もスケールの大きな物語が描かれる第8巻。割と簡単に口にしてしまう“世界の平和”とは何か?世界が平和だから日常が平和になるのか?日常の小さな平和が保たれるから世界が平和なのか?という難しい命題を内包して友月家の役割が想定外の要素を抱えたまま次の段階へ至ることを示す物語となっている。

今回ちょっと面白かったのは、ラヴコメでは概ね規定値となる三角関係について変わったアプローチがされていること。つまり、啓介にとってアリッサと友月という2人のヒロインがどんな存在なのかを、答えが出ないまでも結構真摯に啓介が考えていることである。「そのまま二股かけてりゃいーじゃん」という「男子サイテー」的な身も蓋もない考えもあるかと思うが、これが妹の由衣を一度失った経験だったり、本編に絡んだりすることで、要するに「片方を選べば他方を失う」という思いに駆られて悶々とするのである。そして、これがまた単なる恋愛感情ではないところが本シリーズらしく、この物語はやっぱりラヴ付属のシリアス物語なんだなぁ、と改めて実感するのである。今回は友月寄りに傾いたものだったが、はっきりと意志表示してみせたアリッサと次展開への伏線がぎっちり詰まったエピローグが新たな不安を読み手に抱かせる引きを見せている。

なお、今回久し振りに出番の多かった冬上。いつもあまり情報を与えられなくて状況がよく解っていないのに核心を突くセリフを今回も吐いている。結構好きなキャラなのでこれからも活躍の場を与えてほしい。【ツグミ】という妹キャラも出てくるが、この娘も友月・冬上・陽名の時と似たような道筋を辿っており、「昨日の敵は今日の友」というのは、もしかしたら本シリーズの根幹を成すテーマなのかな?と思ってしまった。

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