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紙の本
世界は米国軸の国際金融資本支配のグローバル資本主義の時代。富と貧困を同時に蓄積する矛盾は抑制の必要が
2000/10/06 15:22
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投稿者:和田 正光 - この投稿者のレビュー一覧を見る
資本主義は永久に勝ったか? ベルリンの壁崩壊と東西冷戦終結の後,資本主義が拠って立つ市場原理は世界を席巻する勢いを見せた。昨今は旧社会主義陣営の元気のなさに比べて資本主義陣営,特に米国経済の元気のよさばかりが目立っている。それはまさに米国を中心とするグローバル(著者の表現によれば「世界的規模の」)資本主義の世界制覇を思わせる状況である。
だが著者はグローバル資本主義の光と影,夢と現実に冷厳な分析の目を向ける。グローバル資本主義小史でもある本書の中で,その発展の跡をたどるとともに増大する矛盾も赤裸々に描いている。この批判的な姿勢には“米国の繁栄”に警鐘を鳴らし続けるJ・K・ガルブレイスらの姿勢にも相通じるものが感じられる。
本書はまず序章で,グローバル資本主義を理論的に解明するため英国の進歩的自由主義派経済学者J・A・ホブソンの「帝国主義論」に注目する。ホブソンは「帝国主義は誰のためになるかと問えば端的な答は投資家だ。帝国主義とは私的利益の所有者,主として資本家達が国外で私的利得を得るために政府機構を利用することを意味する。英国の近代対外政策は有利な投資市場を目指しての闘争で,この結果世界最大の債権国にもなった」と説いた。著者は「イギリスからアメリカに代わったがホブソンの考えは今でも有効で,現在の世界経済を支配しているのはアメリカの投資・金融業者だ」と見ている。
第一章は大航海時代から第二次世界大戦に至るグローバル資本主義の発展を,第二章は第二次世界大戦以降今日に至るグローバル資本主義の拡大を概観する。“遅れて来た”日本の資本主義が軍国主義化して惨たんたる敗北の日を迎えた経緯や,米軍占領下で行われた戦後改革が結果的に日本資本主義を蘇生させた事情なども簡潔に描かれる。ソ連型社会主義がなぜ倒れたかについては官僚制の硬直化,特権階級の存在,スターリン主義の抑圧と強制に対する民衆の反発などを指摘する。「倒れたのはマルクス流社会主義ではなく,ソ連に現存していた“社会主義”である」というのが著者の立場である。
第三章(終章)は現代の肥大したグローバル資本主義が抱えている諸々の矛盾をあばき出す。南北問題は強者と弱者の経済格差が不等価交換貿易で拡大し,民意を無視した経済援助はしばしば現地の発展を妨げている場合がある。兵器産業や原子力産業の金もうけ主義が平和の維持を困難にしている。自由競争市場に任せていては社会福祉の充実はあり得ない。世界経済の半分は女性が支えているが市場は女性をタダで利用している。地球環境や人口爆発の問題も市場には任せておけない。グローバル資本主義は一方で富を,一方で貧困を蓄積させる。こうした矛盾のさらなる拡大を抑止するためには,社会主義政党の存在にも一定の意義を認めるべきではないかと著者は指摘している。
(C) ブックレビュー社 2000
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