紙の本
雄弁な死体
2003/08/08 10:50
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投稿者:Kay - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本では3つのことに心惹かれる。一つ目は実際的な死体についての知識。溺死体では左右の心室で血液の濃度が違うなんて、言われなければなかなか気付かないことだ。大体普通の人間が死体に詳しいだなんていかにも怪しい。しかしそこにそういう知識があるなら知りたいと思うのが人間なのだ。「へーっ」と驚いたり「ふんふん」と納得しながら読み進める。
二つ目は、死人を取り巻く人間のドラマだ。この本はただ専門的な知識の羅列で終わるのではなく、著者が実際に扱った事件や、それに基づいた短編も収められている。死体の検死に始まって徐々に情報をたどり、行き着く先にあるのは思いもかけなかった事実。上質のミステリーのようで、これが実際にあったと思うと薄皮一枚剥がれたリアルさがある。
三つ目は、法医学者として長年仕事をしてきた筆者の社会観、人生観だ。死体の聞こえざる声を聞き、本当の死因を突き止める為に死体を解剖するなどという仕事、強い使命感がなければ出来るものではない。もし他殺死体を自殺死体と言ってしまえば、その人を殺した犯人は永遠に捜査され罪に問われることはない。あの世があるなら、その死んだ人はあの世でどんなにか悔しいだろう。死者の人権を守ることは、その死者の生きた生を尊ぶことなのだ。筆者の言葉には長く真実を追究してきた者の強さと真っ直ぐさがある。
余談だが、この本で得た知識を利用して巧いこと殺人を働こうとしても上手くいく可能性はかなり低い。まず、この本に書かれていることが法医学の全てではない。本文の中で死体にどれだけのおもりを付ければ沈んだままでいるのか「私は知っているが教えない」そうだ。また、この本は94年に書かれたものであり、それから法医学は長足の進歩を遂げている。死体の口を塞いでおくのは、もはやとても難しいことなのだ。
紙の本
とっても面白い
2001/08/13 01:39
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投稿者:奈々 - この投稿者のレビュー一覧を見る
看護婦してると何人もの人の死にあたる。死体というものが、日常茶飯事になっていて、死体を考える余裕がなかった。この本は、死体も一つの人と考えて大事に世話? しています。
そして、暗い真面目な本ではなく、とても面白くスラスラ読めた本です。こういう人が先生だと、授業も楽しかっただろうなぁと思いました。
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テレビで度々登場するので、著者をご存知の方はかなり多いはずです。
何故か、高校生になってから一番最初に借りたのがこの本でした。
中学生の頃にも著者の本を読んだ事があるのですが、いろいろな意味で怖いですね。
あまりにもリアルすぎて、ホラー小説を読んでいる時よりも怖いと思いましたよ。
でも、著者がこの本に記した事は全て本当の事だし、ドラマやアニメなどで形づけられた『死』とは遠くかけ離れているという事に気づきました。
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法医学者上野氏のおなじみ死体シリーズ。『死体は語る』と論調は変わらず、個別の事案を一話ずつまとめてあるので、へえ〜と思うような話を短い時間に少しずつ読める。通勤のお供にいいかも。でも、ブックカバーはかけるべきかもしれません。
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『死体は語る』『死体は生きている』の作者☆
元東京監察医務院長医学博士、
監察医経験30年、検死した変死体20000。
法医学で何が出来るのか、何のためにあるのか、がとてもよく分かる本。
専門的な話ばかりではなく、小説風に書かれていることもあって
すごく読みやすい&分かりやすかった(o^-^o)
そして、監察医としての在り方をきちんと持ち、
法医学という分野に愛情を持っていることが伝わってきて
読んでいて気持ちが良かった。
(2007.04メモ→2010.04ブクログ)
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「死体は知っている」3
著者 上野正彦
出版 角川文庫
p36より引用
“いや、目を閉じなければ見えないものもあるのかもしれない。”
法医学者である著者による、
死者とその死因にまつわるエピソードを綴った一冊。
著者の豊富な経験を元にした実例と、
まるでノンフィクションの様な短篇が収録されています。
上記の引用は、
魂の重さと題された項の締めの一文。
本当に大切な物は目に見えないとは、
星の王子様の中で使われた一言だったでしょうか?
死を科学的に分析する法医学者であったとしても、
感傷的な考えを持たざるを得ない、
理屈で分かる事の出来ない事が、
まだまだこの世には数多くあるようです。
事実は小説より奇なりを地で行く様なエピソードが多くあるので、
リアルさを追求される方に。
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死体の状態から、どのような状況で死に至ったかを知ることができる。
それによって真相が明らかになる。
「死」と向き合う仕事はすごく怖そうだと思うが、著者は真正面から向き合っている。
死と向き合うことで、亡くなった方を尊重できる。
わかっているけど、怖い。そう思う人が多いんじゃないかと思うだけに、著者はすごいという月並みな感想が出てくる。
なかなか考えさせられる本だった。
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監察医という立場から、事件を追う。
複数のショートストーリーの中で特に気に入ったのは、【黒い砂】
死体の症状から、事件の全容、犯人の心境まで読み抜くのは、ある種の爽快感がある。
私は誉田哲也のストロベリーナイトを始めとした姫川シリーズの國奥先生が好きで、検死に興味を持ちました。
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友達におすすめされた本。グロくて面白いって言われて期待して読んだけどこれは物語じゃなくて解説本だったので残念!残念ながら全く好みではなく説明書を淡々と読んでる感じ。
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監察医としての実体験を元に書かれた本なので、ものすごい説得力と、自分の知らない世界を知る好奇心をくすぐられまくりの一冊。ましまろさんは無知なので、そんな制度があることも知らなかったし、全国にあるわけじゃないことも知らなかったし、知的好奇心満たされまくりでおもしろかった。一番心に残ってるのは高齢者の自殺の要因。周囲に誰もいない孤独ではなく、家族が近くにいる環境で感じる孤独が哀しくて仕方ない。あと二冊上野さんの本を買ったのでゆっくり読みます。
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ゲーテの臨終の言葉を法医学的に検証し、死因追究のためとはいえ葬式を途中で止め、乾いた田んぼでの溺死事件に頭を悩ませ、バラバラ殺人やめった刺し殺人の加害者心理に迫る…。監察医経験三十年、検死した変死体が二万という著者が、声なき死者の声を聞き取り、その人権を護り続けた貴重な記録。