紙の本
英国での出版が1887年。ワトソン博士がシャーロック・ホームズに出逢い、ふたりで手がけた最初の事件が、コレ。
2001/08/18 20:51
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る
「英国は奇人が生き易い国」と言っていたのは、名エッセイストでもある数学者の藤原正彦氏であったかと思う。奇行癖がある人でも「村八分」されることなく、生きる場所があるというのだ。
軍医としてアフガニスタンから帰国したワトソン博士には、親類縁者がいない。自由の身なので、人びとが「はきだめ」のように集まるロンドンがいいと選んで暮らし始める。ホテル暮らしはお金がかかるから下宿をさがそうとしていた矢先、戦友に出くわす。その人物が引き合わせてくれるのが、ルームメイトを求めていたシャーロック・ホームズなのである。
仲立ちに立った人物は、ホームズの職業も知らない。だだ、彼の出入りする病院の化学実験室で、ホームズはいつも実験をしているという。医学を組織的に勉強したというのではないが解剖学に詳しく、突飛な化学の実験をしては風変わりな知識で教授たちを驚かせてばかりいるという。ワトソン博士の戦友は、あまり関わり合いになりたくない様子である。
初対面のワトソン博士は、ホームズにいきなりアフガニスタンに行ってきたことを当てられて驚くが、どうしてわかったかの説明をしてもらえないうち、血痕が新しくても古くても血液の検出ができる方法を発見したばかりだと実験を見せられる。
興味深い人物だと判断したワトソン博士は、ルームメイトとして一緒に暮らし始め、やがてホームズ自身の口から、職業は「探偵」だと打ち明けられる。ホームズを頼ってやって来る刑事たちも、彼の難物ぶりを疎ましく感じている様子。無碍には扱えないが、できることなら深く交際はしたくないというホームズの奇人ぶり。これでもかというぐらいに強調されるのだが、それがホームズという探偵が神話的な存在となっていく仕掛けだったのだと今なら言うことができる。
刑事の要請で、空家で死体となって発見されたアメリカ人紳士の事件に協力することになるホームズだが、始めは警視庁に力を貸すことに気乗りしていなかったのに、ホームズの魅力の唯一の理解者であるワトソン博士の言葉で、重い腰を上げる。歴史的なコンビの誕生だ。
評価の高い長編『恐怖の谷』でも用いられた構成であるが、後半になると、前半とは趣きががらりと変わる。ホームズが見事な観察と推理で殺人事件を解いてみせるのが前半分。電光石火の逮捕劇が面白い。そして、後半では、この事件が起こった原因が数十年前のアメリカにさかのぼられる。迫害されたモルモン教徒たちが安住の地ユタに辿り着き、ソルトレーク・シティーをつくり上げていった経緯が描かれており興味深い。
冒険小説でスタートしたコナン・ドイルが、先達を超える「ひとあじ違った探偵小説」を志した結果が、奇人ホームズのキャラクター、そして、移民たちが暮らす大陸への思いとして形あるものに実り、19世紀末の英国の人びとに強くアピールした。そして、異なる時代の異なる地域の読者にも訴える普遍的な魅力として受け容れられたのだと思う。
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実家の本棚から発掘しました。(笑)
謎解きはもちろん醍醐味の一つですが
それだけにとどまらないのがいいです。
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「アフガニスタンからお帰りですか」「アフガニスタンへ行かれてたのですね」「アフガン軍人さんてわけだ」とにかく運命の出会いはここで。
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ホームズシリーズ第一作目かつ、ホームズとワトソンの出会いの作品。それまでホームズは“オールマイティーな紳士”のイメージがあったが、原作を読むと“自尊心の高い変わり者”感が否めない。でもなんら共通点のないワトソンとのコンビが、不思議な安定感をもたらしてくれる。因みに小生のシャーロック・ホームズ像はジェレミー・ブレット氏で定着している。
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わざわざ説明するまでもないシャーロック・ホームズシリーズの第1作。
最初からホームズの推理に圧倒され、あっという間に事件が解決されていく。
途中に犯人の物語が挿入されているところが斬新。
ただ、訳に関してだが、ホームズがワトスンに丁寧語を使うことにはちょっと慣れない。
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いっそ後半部のほうが面白い。
ホームズはやっぱり……飛躍的な推理すぎると思うのですが。
少なくとも、現代ではホームズは活躍できないだろうな。
色が黒いからアフガニスタン戦役に参加しただろ。
医者らしい顔をしているから医者だろ。
医者らしい顔ってなんだ!!ワトスン!!
改めて読むとホームズがいい加減すぎて衝撃的です。
結局、血文字は
気分で書いただけ。というオチだし。推理に何の役にも立ってない。
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読書会指定図書ということで読んだ。この本はシャーロック・ホームズの記念すべき第一作らしい。特に大好きというジャンルの本ではなかったが、こういう機会がないと読むことはなかったと思うので、よい機会だったと思う。
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すげえ!ドラマシャーロックの配役で再生される!面白い!
というのも、シャーロックホームズ初出演のこの本は、
人を描くことに注力していたとのこと(解説より)。通りで。
そしてぐいぐい引き込まれて、後半の構成に驚いて、でもやっぱり最後はホームズらしくて。
これは面白いなあ。他のシリーズも読んでみよう。
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第2部のがっつり加減に驚いた。
犯人の背景とか動機がこんな形で書かれてるとは思ってなかった。
個人的にはバシッと分ける構成より、物語にとけこませる形にしてほしかったかな。
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コナン・ドイルの『緋色の研究』を読了。今更になって初めてコナン・ドイルの作品を手に取ってみた。ドイルの作品を未読だったとは、ミステリファンとしては正直言ってあるまじきことだった。
ミステリファンならば、現在の作家たちに影響を与えている古典にもそれなりに目をとおしておかなければ。新しいものしか読まないのは、『にわかミステリファン』と言える。ミステリに傾倒するなら、古典は無視できないというのが持論。
それでは『緋色の研究』の感想を。本作はドイルの『シャーロック・ホームズ』シリーズ第1作。お馴染みのコンビ、ホームズとワトスンの出会い、そして最初の事件が描かれている記念すべき作品。
内容は大きく分けて2部構成。1部は私立探偵ホームズとワトスン博士の出会いと、事件のあらまし。2部はホワイダニットについて。犯人と被害者の因縁が、1つの短編小説の様に記されている。つまり2部には推理する要素が殆ど無いということになる。
ミステリとして注目すべきはやはり1部。ワトスンと出会ったところからいきなり推理を始めるホームズが正に探偵らしい。主人公が私立探偵の作品に出てくる脇役の警察は殆どの場合頭が悪いが、このシリーズも例外ではない。ホームズはなかなか論理的な推理をして、警察をコケにするような発言をしたりする。
しかし作品に多少の矛盾点も見受けられた。ネタバレになるので詳しくは書けないが、実際の事件に当てはめて考えてみると「それはおかしいのではないか?」と思わざるを得ない場面が何か所かあった。推理小説では突然予想外な動きをする登場人物はまずありえない。例えば、高齢で物事を忘れやすい、という伏線を貼っておくのならば話は別だが。
それに現実の事件は、小説に出てくる犯人のように頭が回らないという事も考えられる。ヘマをやらかしてすぐに捕まる犯人もザラだ。
古典ミステリにはいま現在の小説ほどに複雑で論理的な作品は無いと思っていたが、思えばオレはまだ古典をそんなに読んではいない。これからもドイルやクイーン、カー、クリスティなどの作品を読んでいこうと思う次第。
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2016年11月2日読了。シャーロック・ホームズとワトソンの初登場作品、図書館のリサイクル文庫を入手して読了。小学校くらいに「まだらの紐」「バスカヴィル家の犬」などは読んだがこれは読み落としていたかも。初っ端から「飛ばして」くるホームズの変人ぶり・有能ぶりと警察の無能(と言うのはかわいそうだが)ぶり、そこはかとなく漂うワトソンの温厚さは十分に表現されていて読んでいて楽しい。ホームズの推理は相当強引で、「え、でも偽名を使っていたらアウトじゃない?」と思ってしまうが、強運も探偵の必須能力の一つ、ということかな…。100年経っても面白いホームズ譚、現代のミステリも当然のようにこれを踏まえて書かれているわけだし、久しぶりに色々読んでみるのもいいかな。
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ホームズ初登場!
ホームズとワトソン博士の出会いと殺人事件が1部、犯人の話が2部構成。
前半は、こうして二人は出会って色々あるのね。後半はカラーが違って、砂埃と岩肌の冒険譚という印象。
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延原氏訳のホームズが好きだったのですが、阿部氏訳のホームズもとても良かったです。引き込まれる文章に最後までワクワクしっぱなしでした。
些細な手がかりから本質を見抜くホームズの推理も痛快ですが、登場人物の人間模様や心情がとても細やかで心揺さぶられるところも見どころです。
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インドに従軍して帰国したワトスン博士は、ふとしたことからベーカー街221番地Bに風がわりな友人と同宿するおkとになった。
その名はシャーロック・ホームズ!
かくしてホームズとワトスンの不朽の名コンビが誕生することになった。
二人が手がけた最初の事件、それが本書「緋色の研究」である・・・空家の中で殺されていた謎の死体、その壁に血書された“復讐”の文字。
この怪事件にとまどう警察当局をしり目に、ホームズの快刀乱麻を断つあざやかな推理は、過去にさかのぼって驚くべき真相に到達する。
ホームズが全世界の読者に初登場のあいさつを送った記念すべき第一作!
解説 中島河太郎