紙の本
国家のウソを暴く
2011/11/05 22:06
7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:24wacky - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は昨年3月まで27年間沖縄地元紙琉球新報の記者を務めた著者による待望の「沖縄の基地問題」解説書である。熟練した元記者による情報の豊富さと定評のある明快な語り口で文字通り“国家のウソを暴く”(本書帯のコピー)内容となっている。
〈第一章 「普天間」の行方〉は頁数が多く割かれていることからも分かるように本書の中心をなす。いわゆる「普天間問題」の経緯と、そしてここが最も訴えたいポイントといして、大部分の日本人がいかにこの問題に対し無関心あるいは無理解であることが深刻であるかを指摘している。とりわけ《印象に残っているのは、日米安保や基地問題に関するデータ、言説や論理、理屈や理由に関するウソや誤解、誤認や屁理屈、不理解や不認識のあまりの多さです》というとおり、日本のメディアに対する批判は熾烈であり、それを勤勉に毎日読んでいる多くの日本人はよく考えるべきである。
いったい「普天間問題」いいかえれば「沖縄問題」なるものの真実はどこにあるのか。防衛、安保、外交といった最重要事項の真実、つまり日本はいまだにアメリカの属国であり、その限りでの「平和」を戦後享受してきたにすぎないということを国民に知らせず(あるいは国民は知っていても知らないふりをし)、一方でその代償としての米軍基地負担の多くを沖縄に押しつけ続けてきた構造にある。そして代償は実は沖縄の基地負担だけではなく、いまだに民主主義を実現できていないという日本全体にとっての大き過ぎる代償に他ならない。本書で紹介される多数の情報はその一々を例証している。
また、著者は基地経済についても得意分野であり、〈第四章 基地経済と沖縄〉も読みごたえがある。その具体的データに基づいた論旨はシンプルであり、「沖縄は基地がなくなると食べていけなくなる」という間違った常識を軽快に覆す。琉球大学の大城常夫名誉教授の説を紹介した次の引用は「常識」を反対から読み直すと自ずと導き出される結論だろう。
沖縄が「経済自立」を手中にすれば、さらなる経済発展に必要な場所を求め、米軍基地返還の動きを招きかねない。そうなれば在沖米軍基地に大きく依存する日米安保は根幹を揺るがしかねない。日米安保を将来にわたって安定的に維持・運営していくためには米軍基地の拠点として沖縄の経済発展をいかに抑制し、米軍基地なしでは地域経済が成り立たないような体制をいかに保持するかが日米両政府にとって重要な課題となるとの見方です。
よく比較される例であるが、基地返還され地域が活性化した北谷町と、普天間基地「移設」先の辺野古を抱えることにより莫大な振興予算が投下され続けたにもかかわらず失業率は悪化し、市の借金は膨らむばかりの名護市の事例紹介はこれまた分かりやすい。基地受け入れのための「アメ」に依存し続けてきた名護市がようやく事態に気づき、基地に反対する立場の新しい市長を選んだ昨年の変化は記憶に新しい。
著者が最も危惧するのは日本の民主主義の形骸化である。そのことが沖縄にいるとよく分かる。だから一刻も早くそのことに気づくべきだと平易な文体で「日本人」に語りかけている。文体は平易であるがその訴えは「日本人」へのレッドカードである。「このような入門書を書かせるのはこれで終わりにしてもらいたい」と。
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沖縄県民の立場から述べられた新書で、沖縄県民の感情を代弁していると言っても過言ではない。
日米地位協定の不平等性についてはよくわかるが、県民感情が表に出すぎているのが、新書としては残念。
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それなりに面白いです。
言いたいことも分かります。
でも、前のめりな印象が残ります。
文章も、気持ちは汲めるにしても、読みやすいとは感じませんでした。
「まあ、新書だしね」というレベルなのかも知れませんが、ちょっともったいない気がしました。
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沖縄県民の立場から米軍基地問題を論じている。結論としては、米国の国家戦略に追従している日本の国家戦略、外交戦略なき現状に対して警鐘を鳴らしている。本土の大多数の人間は基地問題に対して無関心でいるが、そろそろ沖縄だけに負担を背負わせるのをやめるべきなではないだろうか。
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日本への占領政策としてスタートした米軍の日本駐留は現在も続き、沖縄は「基地依存」を強いられることになった。この現実を私たちはどれだけ真摯に向き合ってきたのか?そういうことを突きつけられました。
僕がこういう本を読み始めたのは防衛省の失言問題に端を発するものでありますが、やはり、僕の沖縄に関する認識もあまりにもなさ過ぎたということを痛感するしだいでありました。しかし、僕自身の感覚でいうと、諸般の事情であまり詳しくはかけませんけれど「米軍基地のある街」で一時期生活をしていたことがありますので、感覚的にはある程度のことはわかっているつもりでしたが、太平洋戦争(ひとによっては大東亜戦争)の末期。沖縄が『捨て石』として扱われ、戦後にいたっては日本に駐留する米軍基地の実に70%以上が集中するようになってしまった。その経緯までは、概要ながら頭の中にはあったのですがここでは沖縄と米軍基地の現状。普天間やグアムの移籍の問題。基地の経済と沖縄の複雑な関係などが記されていて、その点については面白く読めました。
よくこの問題には中央の政治エリートによる沖縄に対する『差別』が存在する、というのは母親が沖縄出身で沖縄戦争で九死に一生を得たといわれる佐藤優氏の言葉ですが、そういったことも踏まえて読んでみると、なおいっそう面白いかと思われます。
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沖縄に関連する基地問題は、大雑把な理解程度に終わっていたので、不勉強は僕にとってはありがたい本だった。
特に心に引っかかったのは、クェートやジブチ政府に対して、日本が地位協定を結んでいたということだ。子供の頃から習ってきたのは、自分にやられて嫌なことは人にするなということ。それは基本じゃないかな、たとえ国家間であったとしても。そんな協定を結んでしまっているから、アメリカに対しても強く言えないのではないか。しかし、国民が思っている以上に、日本は軍事国家になっているということも、この本から感じとってしまった次第である。
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高知大学OPAC⇒ http://opac.iic.kochi-u.ac.jp/webopac/ctlsrh.do?isbn_issn=4047102970
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基地問題について、琉球新報の元記者である著者が沖縄側の目線から解説しています。
日米地位協定の不平等さなど、初めて知る話も多かったです。
基地問題に関しては大手メディアの情報だけを鵜呑みにせず、さまざまな立場の人達の話を聞いて、自分で何が正しいか考えることが大事だと思いました。
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普天間基地。あの密集市街地にイカれてるとしか思えない。都内なら新宿御苑あたり、ニューヨークならセントラルパークに滑走路を打ち込むようなものだな。
沖縄に横たわる広大な米軍基地は、戦後の一時期を除き、沖縄の経済発展の大きな阻害要因になっている。沖縄内の基地返還後の経済波及効果は30倍にもなっているところすら存在する。
戦後70年近く経っているが、沖縄は3K依存経済と呼ばれている。、3Kとは基地、公共事業、観光の頭文字を取ったものだ。
日米安保、日米協定。
アメリカは何から何を守っているのか。
自衛隊は何から何を守っているのか。
湯水の如く血税がジャブジャブ垂れ流れているわけだ。しかし、日本では暴動なんて起きないね。たまに霞ヶ関あたりで、原発反対のチンドン鳴らしてるか北方領土返還の行進くらい。
民主主義。世界でも有数の治安の良さはもちろん、街の清潔具合、正確な電車の往来、その他インフラ、その恩恵は受けている。が、しかし、日本国民の無関心も中々のものだな。
尖閣諸島や竹島にしても、例の銃撃事件の際も、なぜ、防衛省の声明は出るが、外務省や首相声明は出ないのか。武力に武力の勢力均衡論ってのは...
本書で冒頭、本書の目的は民主主義を再考するきっけの一助になればと書かれているが、目的は大いに達せられた。
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【琉大OPACリンク】
https://opac.lib.u-ryukyu.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB06706148