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紙の本
<静謐にして苛烈><短編漫画の頂上>という帯コピーは言いえて妙。
2003/09/04 15:18
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:水品杏子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「神童」以来、さそうあきらの漫画にほれ込んでいる私だが、
「この帯コピーはマジでうまないな!」と思いながら購入した。
<静謐にして苛烈>
さそうあきらをあらわすこれほど的確な形容詞があるだろうか(いやない。)
ここに収められているのはどれも、静かに生きる人々の内に秘められていた、凄絶な喪失感/悪意/後悔などといった気持ちが表面化する、という話だ。
さそうあきらの絵は「生理的に受けつかない」という人が私の周りには多い。たしかに個性の強い絵だとは思うし、漫画の絵はデッサンの狂いがなく美しくならなければ、と思っている人には受け入れにくいかもしれない。実は私も正直に言うとこの絵だけなら特に好きでもないのだが、実際に読んでみると、この話はこの絵じゃなきゃだめだな、と思えてくる。
さそうあきらの描く人間は、なんだか生きていないように見えることがある。手作りの人形のようなアンバランスな…。しかし、この生気のなさこそが、的確な現代人像を描くことに成功をもたらすのだと思う。
たとえば。
第一話。事故で弟を無くした若いお針子さん。ある日、電車に飛び込んでしまおうとホームのふちへと歩き出す。そのとき、ちょうど背中にくっついていた針と糸がまるで弟のように彼女を引っ張り、自殺を思いとどまらせる。というシーンがある。
画面を横切る一本の糸の描写。鳥肌がたつ。
この感動は、さそうあきらの絵でなければ得られないものだよなぁとしみじみ思う。
ほかに印象的な話は、
中絶を繰り返すうちに、赤ん坊の幻覚が見えるようになる女性の教師の話である。
感動するのだが、なんともいえない不気味さを残すラスト、必見である。
さて。読み終えてもうひとつのコピーを思い出す。
<短編漫画の頂上>
「富士山」というタイトルにぴったりであるばかりか、決して誇張ではなかった。
短編漫画、というものはとっつきにくいかもしれない。が、これは何度でも読める文学みたいな漫画である。
値段が少々高いが、本書はすっきりしたケース入で、しかも表紙の桜は撮影ホンマタカシであるのだから損はない。このデザインのストイックさもまたなんとも内容にマッチしていて恰好いいのだ。隅から隅まで手の込んだ、文句のつけようのないすばらしい本だ。
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