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主人公の女浮世絵師を中心に描かれる、このシリーズも最終巻。
チャンバラのない時代物ですが、
人は流行病、事故、自殺(!)などで
さらっと理不尽に死んでいきます。
「死」の気配が非常に濃厚なのにもかかわらず、
どこかカラッとしている、不思議な雰囲気のお話です。
当たり前のように死がすぐそばにある中で、
前を向いて歩く人々の描写が本当に素晴らしい。
芯の強いお話を書くなぁ、としみじみと思います。
この物語を書いている間に、
作者の方は旦那さんをガンで亡くされていることが、
もしかしたら影響しているのかも知れませんね。
また、江戸末期の風俗が非常に詳しく描かれていて、
そういうトリビア的な意味でもたいへん楽しめます。
第一巻からどんどん尻上がりに面白くなっていくので、
3巻目くらいまでは一気読みするのがオススメです。
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【命毛】とは、筆の芯になる、穂の部分の一番長い毛。この毛の働きが書の線の命となるそう。国芳の娘・登鯉を溌剌と書ききった凄く良いシリーズでした。そしてこのシリーズを上梓するにあたって秘められた作者の個人的事情もなんだか死を見つめる登鯉に重なります。安政の大地震のくだりでは、「何もかも世の中がひっくり返るということは、起死回生の機会が潜んでる」との言葉に勇気を貰いました。
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終わってしまった‥。
登鯉ちゃん、色々あったね、と肩を叩きたい気分。
最終巻らしく、これまでの男が勢揃い。
新場の小安のこと、私はそんなに好きじゃないけど、登鯉ちゃんを泣かせるなよ!
人はあっけなく死ぬものだなあ。
死ななくとも、何かのきっかけで人生はがらりと変わる。
後書きで著者の経歴を読んで驚いた。
若さと勢いで書いた荒削りな作品だと思ったら、ベテランの方だったのね。
小説家としてのベテランではないので、そういう意味では勢いで書いたのかもしれないけど。
兎に角楽しませていただきました、有難う。
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タヌキの殿様こと、元南町奉行遠山が死んだ。
登鯉の病状も悪化していく中、周りにいた人たちが突然にしてこの世からいなくなってしまう。
あたいもいつ死ぬんだろう。
そんな中、江戸に災禍が襲う。
安政の大地震、一夜にして江戸が灰燼と帰する。
命からがら逃げだした国芳と登鯉だったが、国芳は卒中を起こし右半身が動かなくなってしまう。
その間に、義理の母せゐが突然に世を去る。
何の奇縁か、国芳一門に入った注文は、大万燈。
題目は”一ツ家”。
一ツ家に関わると呪いがかかる。
この最後の大仕事に、国芳娘 一燕斎芳鳥が挑む。
シリーズが終わってしまった。
最初は江戸っ子気質の侠風娘だった登鯉が、女絵師として経験を重ねるつれての成長譚。
その成長だが同時に労咳にかかり、自らの死を意識して世のはかなさを憂うことにもつながっていく。
シリーズを通して、国芳一門に興味を持った。
生きていくときの決断に迷ったときには、粋なほう、という生き方をしていきたい。
シリーズはこれにておしまい。
国芳、登鯉亡き後に残された次女、13年後のお吉視点のその後の国芳一門「ニッポンチ」に続く。
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このシリーズの最終巻。
安政の大地震、大雨と洪水。
次々と命の危機を感じるような江戸。
そんな中であっても、江戸市民は、ご利益があるとか、ナマズのせいだとか、次々と瓦版が大いに出て、出版印刷業界は、建築関係の職人とともに、懐が一気に豊かになる。
大商人だけでなく、職人たちが潤うと、新しい文化が生まれる。
そんな江戸の、機運を余すことなく物語に注入することができたのは、偶然が重なり、江戸文化、江戸美術をよく知る人物と出会ったため。
国芳研究家としても有名な「いさお敏彦」さん、を紹介してくれたのは偶然喫茶店の隣の席にいた大学教授「山田俊幸」さん。小学館から紹介されたのは「内藤正人」さん、火消しや千社札、袋物、日本橋に詳しい「其角堂」さん。
作者のご主人が執筆しようとする矢先発癌し、見送り、大変な時を経て出来上がった。
とてもいい作品シリーズだった。
少なくとも、何度か読み返したい。