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紙の本
「政治家、向いてないのでやめます」と去った政治家の「失われた10年」を追う
2001/11/08 22:16
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投稿者:中山康樹 - この投稿者のレビュー一覧を見る
元自民党代議士・久野統一郎(愛知8区)、ご存知ですか。ぼくはまったく知らない。というよりも、この久野統一郎にかぎらず、じつは国民が知っている政治家などごく一
部、その存在すら知られていない政治家のほうが圧倒的に多い。
オビには「2000年6月、国政史上、前代未聞の理由で政界を去った」とあり、その前代未聞の理由というのが「向いてないので」というから聞いてあきれるが、著者は久野統一郎がその程度の知名度であったからこそ、題材にしたという。
「大物議員を主人公にしたくはなかった。財界との結び付きなどが、一般有権者との距離感を生じさせ、読者の共感を呼ばないと思っていたし、別世界の気持ちにさせられるからだ。大物議員ではなく、中堅議員、若手議員の視線から見える政治を書きたかった」(あとがきより)
それにしても大作、1ページあたり945字、総ページ約400とじつに読みごたえがある。基本的には主人公である久野統一郎への取材をもとに構成されているが、舞台が政界だけに、大物議員や名もない議員が登場し、久野が政治にたずさわっていた10年間の出来事や動きが複雑にからまりあって、これだけの量をもってしても十分ではなかったのではないかとさえ思わせる。
しかし本書が重要なのは、じつはそういった政界の表舞台でも裏舞台でもなく、政治家が「なにもしていない」「まったく働いていない」ことを見事に描ききったところにある。もちろん、それが著者の本意でないことは理解しているが、読み進めるうちに腹が立ってくるほどに政治家は働いていない。
たとえば朝8時から夕方6時までの間に「42」の会議に出席とあるが、いうまでもなくこんな会議でなにかが話し合われ、なにかが決定されるわけがない。会議に出席することが「仕事」であり、主人公自身「話の内容はわからないし、覚えてもいない」とこたえている。
さらには地元への挨拶回りに忙殺され、すこしでも帰省が途絶えると「帰ってこい」と催促され、帰ったら帰ったで「ああしろ、こうしろ」とうるさくいわれ、しかしそれに応えないことには次の選挙が危ぶまれる。
もちろん、政治家としての仕事もやっているのだろうが、本書が浮き彫りにしているのは、そうした「仕事以外の仕事」に追われる哀れな姿である。結果「向いてないのでやめます」ということになったしだいだが、しかし「向いていない」と思いつつ政界に入った男を10年間も政治家として遇してきた我々国民とはいったいなんであるのだろう。 (bk1ブックナビゲーター:中山康樹/音楽評論家 2001.11.09)
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