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紙の本
クールでリアルな戦争論
2001/08/31 14:09
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投稿者:小田中直樹 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ここのところ、戦後の平和主義を批判する声が目につく。もちろん、憲法第九条死守を叫ぶ人々もいるし、戦死者の弔い方とか従軍慰安婦とか南京大虐殺をめぐる論争も続いてる。どうも今は〈戦争論の時代〉らしい。でも最近の戦争論って(僕だってそうだけど)現場を知らないせいか歴史を知らないせいか、理念と想像力だけで熱く語ってるって感じ。もっとクールでリアルな議論はできないものかって考えながら、この本を手にとった。著者の中村さんによれば、情報化に向かう社会の変化を反映して、戦争のあり方も変わりつつある。中村さんはこの変化を情報型軍事革命と呼んだ上で、情報戦、麻痺戦、攻撃、サイバー次元や時間次元の重視、そして前線思想の終焉といった点で特徴づける。そして、情報型軍事革命後の戦争のあり方、受け入れた軍隊(RMA軍)と受け入れてない軍隊(非対称軍)が戦った場合のシミュレーション、そしてRMA軍と闘うためのヒントを論じる。
この本のメリットは次の三つだ。第一、情報通信技術の進歩は、単に兵器だけじゃなくて、戦争にかかわる戦術や戦略や思想まで変えてしまう力を持ってることを示したこと。湾岸戦争は僕も覚えてるけど、日本人の関心は〈国際貢献のあり方〉と〈ハイテク兵器〉の二つに絞られてた気がする。でも、その裏では、軍隊の運用や組織や編成(スピードと情報の重視、意思決定の分散化)から、戦術や戦略(同時打撃、心理戦、サイバー戦、メディア戦)を経て、実に戦争そのものの目的(国家機能の麻痺)に至るまで、大きな変化が起こりつつあったのだ。盲目的な平和主義者の僕は、戦争について何も知らなかったので、この本を読んでただただ唸った。
第二、大きな変化がおこってるとき、専門家は専門馬鹿になる危険が大きいって警告したこと。いま第一線にいる軍人は一昔前の軍事思想にもとづいて教育されたから、火力と一元的な意思決定を重視し、消耗戦を乗り切って敵軍を破壊することを第一に考える。そして、これじゃ古いぞっていわれても、新しい思想を取り入れることは難しいだろう。あるいはまた、今はメディアの時代だから戦争中も人命を尊重する必要があるなんていうのは、現場じゃ出てこない思想だろう。そして、これは何も軍隊だけにあてはまる話じゃない。
第三、そうはいっても、クールでリアルな専門知識がなければ、戦争についての議論は空理空論だって教えてくれたこと。たとえば、徴兵制が必要だって意見があるけど、ここまで軍事技術が高度化すると、徴兵なんて足手まといで役に立たない。実際、フランス革命以来の国民皆兵思想にもとづいて徴兵制を採用してきたフランスは、徴兵は金がかかるわりに使えないって考えて、つい最近この制度をやめて職業軍人制度にした。こっちの方がずっとクールでリアルだ。あるいはまた、若人は国を守る気概を持てって説教してる人々がいるけど、心理戦に乗らずに〈もうだめだぁ〉って逃げないだけの度胸を持つことって大変だろう。世の中そんなに単純に出来てないのだ。
もちろんこの本は全てのポイントをカバーしてるわけじゃない。たとえば、第二次世界大戦時のドイツ軍の電撃戦、連合軍の都市爆撃、ベトナム戦争時の北ベトナム軍のゲリラ戦、こういった新しい軍事思想に沿った戦略がその後の主流にならなかったのはなぜか、その理由がわからない。新しい戦争では、世論とかメディアとか政治といった、狭い意味での軍事の領域の外にある因子が大きな影響力を持つけど、それらと戦争との関連が十分に分析されてない。でも、クールでリアルな専門知識の一端がわかるから、平和主義に賛成する側にも反対する側にもお勧めの一冊だ。[小田中直樹]
紙の本
オタクの繰言
2001/11/22 12:20
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投稿者:犬 - この投稿者のレビュー一覧を見る
兵器の進歩が戦争に変化をもたらすという、湾岸戦争のころにもさんざん流布した幻想を蒸し返した一冊。わざわざ一章を割いて、もし日本が侵略されたらという現実味のないシミュレーションをするあたり、いかにも軍事オタクらしい。兵器の進歩以外で戦争を語れない無残な様は、今度のアフガニスタン戦争の実情と比べるにつけ、ますます哀れである。
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