紙の本
暴力をふるう男の心の深層と生育歴へと迫ってゆく
2002/07/10 17:40
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:森岡正博 - この投稿者のレビュー一覧を見る
夫が妻に暴力をふるう。それも、普通では考えられないような暴行を、平然とやってのける。他人に見つかったとしても、「いやあ、ちょっとした夫婦喧嘩なんですよ」と冷静に弁解するから、なかなか外からは実態がつかめない。家庭内での男から女への暴力は、根が深く、簡単には解決できない。
しかし、そもそも、どうして男は、同居している女に暴力をふるうのであろうか。豊田正義さんは、妻に暴力をふるう男たちに、徹底的なインタビューを行なった。もちろん、それによって明らかになったことは、真実のほんの一部分でしかないのだろうが、それでも衝撃的である。
豊田さんは、まず、男に会って話を聞く。男は例外なく、自分が暴力をふるっていることを反省し、なんとかしてそれをやめたいと訴える。そして、妻のことを心から愛していると切々と語るのである。暴力をふるう原因は自分だけにあるのではなく、妻の側にも少しは問題があるのだと言う場合も多い。
そのあとで、豊田さんは、暴力男の妻とも待ち合わせをして詳しく話を聞くのだ。驚くべきことに、そこでは、さきほどとはまったく異なったストーリーが語られる。妻の側の落ち度として説明されていたことが、まったくの誤解だったり、あるいは、暴行の実態が想像を絶したものであったりすることが、徐々に分かってくる。
夫の言い分と、妻の説明のあいだに存在するこの落差に、読者はまず度肝を抜かれることであろう。
豊田さんは、このような作業を繰り返し、暴力をふるう男の心の深層と、生育歴へと迫ってゆく。たとえば、暴力をふるう夫のなかには、「自分の人生はこんなはずではなかった」という自己否定の感覚が濃厚に存在する場合があることが分かってくる。それと同時に、「男たるものこうあるべきだ」という男らしさの束縛によってがんじがらめになっているケースもある。
暴力をふるう男たちに対するカウンセリングの試みもはじまっている。それによって回復する例はきわめて少ないと言うが、しかし本書では、いちるの希望を感じさせる実例も報告される。ほんとうにかすかな光だ。
初出:信濃毎日新聞
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DV防止法の施行は必要だと思うし、防止法作成段階から、フェミニストは、法案をあくまで男性加害者の問題として捉える傾向にあっただろう。現実、ここでインタビューされ、ルポされた4例のカップルも、殴る加害者男性/殴られる被害者女性(バタードウィーメン)という公式にある。ただし、ルポから浮上するのは、殴る男性の苦悩であり、また過去に受けた被害者性でもある。トラウマに全てを還元することは無意味な正当化につながりかねないけれども、加害者側の苦悩の声を(時に筆者とともに揺らぎつつ)聞くことができる点、そして、男性によるDV加害者のサポート(メンズカウンセリング等)の情報・簡略なインタビューも掲載されているところは苦悩を抱えている男性には一筋の光になるかもしれない。DV加害者もまた傷つく弱い男性であること――考えてみれば当然だったのかも知れないけれど、その闇は決して軽視されるべきではなく、同時に、DV防止法の必要性とを併記している点で悪くない一冊だと思う。
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著者はメンズリブ東京の代表をしていた豊田正義さん。
DV加害者の男性と、被害者の妻の両者(4件)にインタビューしています。
非常に良かったです。(2007/01)
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酷なお話。こういうのに弱い人は
かなりしんどい部分があります。
私も、読むのがしんどかったです。
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DVの実態に実例から迫る。DVされて黙ってる女の人の気持ちが分からなかったけど、これ読んでちょっぴり納得できたかも。
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DVの加害者と被害者双方からの聞き取りをもとに、DVはなぜ起こるのか、背景は何か、暴力をやめさせる事はできるのかなどを考える。
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[ 内容 ]
なぜ男たちはDVに走るのか。
職業・年齢・生い立ちなど、加害者たちに共通点はあるのか。
男たちに暴力をとめさせる手だては。
加害者、被害者双方の生の声を多く集め、様々なケースからDV問題の本質を浮かび上がらせる。
[ 目次 ]
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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DVをした側のインタビュー集、この本に出てきた加害者は男性のみ。
加害者側の話をみても被害者側の話を見ても人間の心というのは深いと言うより難解だと思った。
合理的になればなるほど理不尽になっていく感覚。
暴力に至ってしまう理由がどこかにあるのだろうけど、その理由になかなか辿り着けない。
でもそこに辿りつかないと変われないのかも知れない。
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暴力をふるった後に全力での謝罪、そしてまた暴力をふるい…
本気の謝罪に「今度こそは優しい人に戻ってくれる」という期待を寄せてまた殴られるという期待と「また殴られる」という気持ちの間で揺れる被害者の体験談がすごく刺さってきた。
加害者側も普段は朗らかな人間であったりするのに、なぜか一番好きな人を殴ってしまう。そのことで後悔してまた苦しむ…
幸せな結末が見てこない話が多いけど、もし自分がDVの加害者になったら?殴られずにはいられなくなったら?と考えてみることはきっと無駄なことではないと感じた。
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加害者側の声が読める本はなかなかないと思うが、この本はかなり赤裸々に加害者側からの視点がインタビュー形式で書かれている。
被害者の声も、加害者側の件数よりは少ないものの、インタビューされているので、両方からの事件のあらましを知ることができる貴重な一冊だと思う。
読了。
この本は、2001年に出版されている。加害者に着目している人がその頃からいるというのに、日本の司法はまだDV加害者へのプログラム参加を義務付けていないのかぁ…というのが、わたしの感想だ。
DV関連は、特に興味を持って扱っていたわけではないので、こうした本を読むのは初めてだが、今後も引き続き追っていければ。
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少し出版年が古いので、
今それなりに増加傾向にある女性によるDVは
掲載されてはいません。
(一応終盤に少し触れる程度)
かなり胸糞の悪い内容となっています。
大体のケースは男性側の根底に
トラウマといったものがあるケースが多いです。
無理強いという事がどれだけ人を傷つけるか…
ほとんどのケースは意識することにより
改善しているケースもありますが
2つほど、残念なケースがあります。
俗に言う「救えない、法で裁くべきDV」です。
ただただ罰則化するだけではない…
奥深いものを見ていかない限り
改善はされないものだと思います。
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DVは単純な問題じゃない。加害者がなかなか理解されず、解決が難しい。具体例 が多くて分かりやすい本。
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DVに関する、夫(加害者)視点の話と妻(被害者)視点の話。
夫視点のパートを読んで「?」と引っかかった部分が、妻視点のパートでスッキリ判明する。
とても興味深い本だった。