投稿元:
レビューを見る
読まなければならないと思いつつも読んでいなかった
ファンタジーのひとつ、エルリックサーガを読んだ。
斬った相手の魂を吸い取る魔剣ストームブリンガーと
それを憎みつつもそれに頼らなければ生きていけない
アルビノの皇子エルリックの破滅へと向かう悲劇的な
ヒロイックファンタジーだと思っていたのだが、実は
ソード&ソーサラーの体をなしているのは最初の方
(この本は作品発表順でなく、エルリック個人の時間軸を
もとに作品が並べられているので、私の個人的な印象
ではおそらく発表順の最初の方だと思う)だけで、巻が
進むにつれて多元宇宙という一種のパラレルワールドが
主人公になり、半ば哲学的半ばSF的なファンタジー
へと変わっていく。もちろんそれがダメだとは言わない
が、私はどちらかというと単純な剣と魔法の物語の方が
好きだ。エルリックがストームブリンガーと出会って
から再びメルニボネに戻ってくるまでの傭兵時代のお話
をもっと読みたかったところ。特に後半三冊は主人公が
エルリックではないし、どちらかというと様々な自分の
作品や様々な神話にリンクを張ることが主眼となり、
物語のダイナミズムのようなものはないがしろにされて
いる感じがしてしまった。
とは言え、読んでいる間は十分楽しめたしファンタジー
ファンなら必読の書であるのは言うまでもない。後世に
与えた影響も大きいしね。