紙の本
何度読んでも勉強になる
2006/01/21 16:13
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
あとがきに、「この本は、もと『日本語の文法<古典編>』として刊行されたものの中の、一般的な教科書的な記述の部分を切り離し、「Q&A」とした部分だけを独立させたものです。」とある。たしかに、『日本語の文法<古典編>』(角川書店1988年)の「第二部Q&A文法の疑問に答える」と同じであった。しかし、何度読んでも勉強になる。言葉の規則を知っておけば、より文章が読み取れるようになり、作者の言いたいことが解るようになる。日本にはせっかく多種多様の古典があるのだから、これらを自在にとはいかなくとも、より正確に読めるようになることは、楽しくすばらしいことである。奈良時代や平安時代の語彙や言葉の使い方は、現代とはかなり異なるため、読み方を教えてもらわなければ、言葉遣いの巧みさや面白さを味わうどころか、意味さえ解らない。些末な部分はともかく、基本的な言葉の使い分けの規則も理解しておかなければ、古典を楽しむことができない。しかし中学高校の古典の授業における文法教育では、大学入試問題の影響もあって、些末な事柄に目が行き過ぎきて、本質的な言葉の使い方の違いの理由が説明されない。そのような問題点、不足な部分を補っている。
紙の本
国語教師のみならず、日本語教師を志す人なら読むべし
2019/09/21 18:55
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:長月 - この投稿者のレビュー一覧を見る
古典を教える必要に迫られて読みました。
しかし、これは古典を教えない国語教師でも、あるいは古典とは縁のない日本語教師でも、日本語を教える立場にある人は全て読んでためになる本だと思いました。
寄せられた質問に答えるという形式をとっているため、重複して述べられている部分があり、また索引がついておらず、目次に挙げられた質問内容から回答の内容が飛躍している部分もあるため、日本語文法を教える際のハンドブックとしては多少の使いにくさはありますが、日本語文法について歴史的な変遷をつかむ入門書としては非常に便利な一冊。
日本語文法に関する本は多々ありますが、大抵は比較言語学者、海外や日本国内で日本語教育に携わってきた人たちなどが多く、現代日本語と外国語の比較対象という視点はあるものの、古典日本語からの歴史を踏まえて現代日本語を考察した本はなかなかありません。
著者はもともと歴史的な語の変遷などを研究対象としてきた国語学の大家で、その膨大な知識を裏付けにして説明される「は」と「が」の違い、それぞれの用法の歴史的な成立経緯に関する仮説は、現代日本語における使用例のみをもとにした説明よりも厚みがあり、説得力がありました。
その他にも目から鱗の考察があちこちに散りばめられ、非常に勉強になる本でした。
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私が持ってるのは古い表紙の。
どこまでも苦手な助詞以外の範囲は分かりやすく、たぶんしっかりと理解できたと思う。同じことを何度でも繰り返し説明してくれるので、「また?」となる反面、理解に至れる。
文体も読みやすく、整然としていて、文法嫌いの私にはありがたいばかり。
形容動詞の論争がどういうことなのかやっとわかった。
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古文の勉強をするのに一通り読んでみたが、日本語がタミル語と何かしらの系統関係にあるというアヤシイ学説が前提の解説がいくつかあって辟易した。
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古典文法質問箱
著:大野 晋
角川ソフィア文庫 241
薄いですが、難読書でした。
もともと 「日本語の文法<古典編>」から、Q&A部分を抜き出したものとあります。ということは、古代日本語の、本質の概要を知っていないと質問ができないということです。つまり、本書を読むことは、文法<古典編>の基本的知識をもっていることが前提になっています。
なぜ、古典を学ぶのか、
詩であるとか、和歌や、源氏物語、のように、精密な日本語で書かれたものは、現代語に訳してしまうと、作者が表した非常に微妙な意味合いをうまく表せない。
そういうものがすくなくありません。言葉は、それを使った人が使った意味・心情をそのまま理解することがいちばん大事なことです。
また、日本語は、語尾まで、聞かないとわからない。その意味では、本書後段に、助動詞、助詞の複雑で繊細で、微妙で、膨大な解説を伴います。
■文法の基礎
・日本語は時代に応じて変化している
・ワ行 ヰ(ウィ)、ヱ(ウェ)、ヲ(ウォ) ⇒ ア行 イ エ オ の区別がなくなってきた
・サ行 サ・シ・ス・シェ・ソ ⇒ サ・シ・ス・セ・ソ
・ハ行 ファ・フィ・フ・フェ・フォ ⇒ ハ・ヒ・フ・ヘ・ホ
・歴史的仮名遣いの4つの発音 アウ⇒オー オウ⇒オー エウ⇒ヨー イウ⇒ユー
・撥音、促音 は 平安時代から
・日本語の特徴 語幹の下にあるものをたして品詞がかわる
ひかる ⇒ ひかり 語幹 ひか
はぢ(恥) ⇒ はづ(恥づ)、恥ぢる、恥づれ 語幹 は
・御 の読み方
①み 御子、御言、御名 御輿、御霊、御岳、:天・天皇・神・仏に関する
②み+大 大御歌、大御神、:天皇や、神に関する語を強調
③おん、お 御曹司、御身 御前、御方:女性語
④ご 御殿、御廟、御免 :漢語
⑤ぎょ 御意、御製、御物:天皇に関する
・品詞の分類
他の語と組み合わない ①感動詞(ああ、いざ、いな、おう)
他の語と組み合う
自立語
活用しない
主題となる ②名詞(花、兼好、二本、こと)
③代名詞(われ、なんじ、こ、いづこ)
主題とならない
他の語を修飾
④副詞(いと、ひとへに、さだめて)
⑤連体詞(ある、いはゆる、あらゆる)
文と文の関係を示す
⑥接続詞
活用する
⑦動詞(咲く、あり、信ず)
⑧形容詞(清し、美し、悪し)
⑨形容動詞(はるかなり、堂々たり)
付属語
活用する ⑩助動詞(けり、ず、たり)
活用しない ⑪助詞(が、ば、ばかり、かな)
※活用があるのは、動詞、形容詞、形容動詞、助動詞 の4つ
■用言
用言;それだけで、述語になりえる 動詞・形容詞・形容動詞
体言:自立語で、活用がなく、主語となる語 名詞・代名詞
・活用とは何か 用言と助動詞が起こす語形変化のことを指す
基本語=語幹+語尾 語尾が変化する
未然形 実際にはおきていない事実を述べるための用法
連用形 用言に連なるための用法
終止形 文の終止に使われる用法
連体形 体言を修飾するための用法
已然形 すでにそうなっていることを表すための用法
命令形 単独で言い切り、聞き手への命令を表す用法、命令の他、許容、放任を表す場合もある
・形容詞
ク活用 高し(高し;〇、く、し、き、けれ、〇 もしくは、から、かり、〇、かる、〇、かれ)
シク活用 楽し、いみじ(いみじ:〇、じく、じ、じき、じけれ、〇 もしくは、じから、じかり、〇、じかる、〇、じかれ、)
見分け方 なるをつけると 上が、く となるのが、ク活用、しく となるのが、シク活用
・形容動詞
名詞+助動詞(なり、たり)
ナリ活用 明らかなり、愉快なり (なら、なり、なり、なる、なれ、なれ)
タリ活用 平然たり、悠々たり (たら、たり、たり、たる、たれ、たれ)
・動詞
正格活用
①四段活用 語尾がアイウエの4段に活用する形式 (咲く;か、き、く、く、け、け)
②上一段 語尾が、エ段1段に活用する形式 (着る:き、き、きる、きる、きれ、きよ)
③上二段 語尾が、ウ段、エ段、2段に活用する形式(起く:き、き、く、くる、くれ、きよ)
④下一段 語尾が、イ段+る、れが添加する形で活用する形式(蹴る:け、け、ける、ける、けれ、けよ)「蹴る」1語のみ
⑤下二段 語尾が、イ段、ウ段+る、れが添加する形で活用する形式(受く:け、け、く、くる、くれ、けよ)
変格活用
⑥カ行 イ、ウ、オの三段の音からなり、ウ段音に、る、れ、オ段音によのついたもの(来(く):こ、き、く、くる、くれ、こ)「来」1語のみ
⑦サ行 せ、し、す、する、すれ、せよ と活用するもの 2語のみ (奏す:せ、し、す、する、すれ、せ)
⑧ナ行 ナ行における母音の添加(ナ・ニ・ヌ・ネ)と連体形にる、已然形にれの添加を合わせた活用(死ぬ:な、に、ぬ、ぬる、ぬれ、ね)「死ぬ、往(い)ぬ」2語のみ
⑨ラ行 四段活用ににているが、終止形がイ段(り)におわること(有り:ら、り、り、る、れ、れ)いわゆる、「有り、をり、はべり、いまそかり」の4語
■助動詞
・日本語は、肯定・否定・推量・断定はどの判断を文末で表現します。
・用言の活用形も使いますが、それだけは不十分であるため、助動詞をつかって、種々の細かい判断が必要となります
・動作が自然的か、作為的か
る、らる 自然
す、さす 人為、作為
・敬意の表明
きこゆ、奉る 謙譲
給ふ 尊敬
侍(はべ)り 丁寧
・動作の進行、完了
り 進行
つ、ぬ 完了
・話し手の判断
ら、らむ、けむ 推量
き、けり 過去
ず、じ、まじ 否定
ずき、ずけり 否定+記憶
・話し相手への働きかけ
な、よ、や、か、かは、かし、ぞ、ぞよ、ぞかし、を 等の助詞
⇒
意思の助動詞 む、まし、べし、じ、まじ
受身の助動詞 る、らる、ゆ
打消の助動詞 う、じ、まじ
過去の助動詞 き、けり
可能の助動詞 る、らる
完了の助動詞 つ、ぬ、たり、り
希望の助動詞 まほし、たし、
使役の助動詞 す、さす、しむ
自発の助動詞 る、らる
推定の助動詞 らし
推量の助動詞 む、むず、らむ、けむ、べし、めり、まし、らし、じ、まじ
尊敬の助動詞 る、らる、す、さす、しむ
断定の助動詞 なり、たり
伝聞推定の自動詞 なり
比況の助動詞 ごとし
様態の助動詞 めり
・助詞
助詞とは、関係づけをする語
格助詞 体言を承けて体言にかかる の、が、つ
体言を承けて用言にかかる を、に、へ、お、より、から、にて、して
副助詞 用言の述事にかかり、その程度、状態を限定する だに、さへ、すら、のみ、ばかり、まで、など、し
係(けい)助詞 用言の述意にかかり、文の成立の仕方に関わる は、も、ぞ、なむ、や、か、こそ
接続助詞 句を承けて下文にかかる ば、で て、して、つつ、ながら と、とも が、に、を、も、ばど、ども
終助詞 そこできれる、文を終了させる か、かな、が、がな、かし、なむ、ばや、かも、がも、な、ね、に、こそ
完投助詞 かかる所なく投入される や、よ、を、ろ、ゑ、
■諸品詞・敬語・修辞
・形式名詞 本来の意味から転じて、形式的、抽象的に用いられるようになったもの
とき、時間⇒場合
ところ 場所⇒こと
ため 利益⇒目的
・コソアド ⇒ コ・ソ・カ・イツ・ド
ココ、これ、こなた、コチ、、ソコ、これ、ソナタ、ソチ、カシコ、カレ、カナタ、アナタ、アチ、イヅコ、コズレ、イズカタ、イヅチ、ドコ、ドレ、コナタ、ドッチ
目次
文法の基礎知識
用言(形容詞・形容動詞)
用言(動詞)
助動詞
助詞
諸品詞・敬語・修辞
ISBN:9784043260027
出版社:KADOKAWA
判型:文庫
ページ数:304ページ
定価:960円(本体)
発売日:1998年12月25日初版
発売日:2014年07月25日14版