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マーケット・デザイン 川越敏司著 制度設計になう経済学の先端
2015/3/8付日本経済新聞 朝刊
就職先や学校の選択、臓器移植、電波の周波数免許の割り当てなどは、単純な市場メカニズムに解決を任せられない。こうした問題に対応できるような制度やルールを設計するのがマーケット・デザインだ。経済学のなかでも注目され、近年の進歩が目立つ分野である。
制度設計に利用するのは「オークション(競売)」と、望ましいペアを成立させる方法を探る「マッチング」が二本柱だ。国際的に活躍する気鋭の学者が、それぞれの理論の成り立ちや研究成果について、エッセンスに絞って基本から紹介する。
オークションでは「1位の価格を入札した人が落札し、2位の入札価格を支払う」方式が理論上は望ましいと知られており、導入例も少なくない。本書では学生らを集めてそれが別の方式とどう違うか実験した結果や、実際のオークション会場での観察をもとに、理論と実践のギャップを探った点に読み応えがある。
米グーグルの広告枠の販売に用いられるオークション方式の問題点や、結婚相手を探すパーティーのマッチングの仕組みなど、身近な事例もふんだんに盛り込まれている。著者も認めるように、こうした仕組みを現実の社会問題に導入するにはなお時間がかかるだろうが、経済学の先端をうかがえる一冊だ。(講談社・1650円)