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先日、テレビで論文の評価を人工知能でおこなうプロジェクトが紹介されていました。単語の羅列次第ではまったく意味をなさない文章も高評価を与えてしまうような問題があって現状では、まだまだ信頼できない技術のようですが、しかし文章とコンピューターが重なりあっていくスピードはますます加速度を上げていくことでしょう。そんな時代に書名に惹かれて。終章の表題でもある「物質と精神のインターフェース」としての文体を見つめる視点と、文体を文学や作家論に留めず広い人間の営みの表出として捉える視野に共感します。ただ、書名の通りもうちょっと科学であったりすることを期待しましたが、まだその入り口なのかな?と思ってしまいました。時空や言語を超えた知識の量には圧倒されましたが。ある種の衒学的なニュアンスを感じるのは、この「文体の科学」の文体に体言止めが多い、からなのでは、と分析しましたがどうでしょうか?「文体の科学」というより「文体の博物学」として読了しました。
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法律の文体は一文がすごく長い。「それ」とか「これ」とかの指示代名詞が使われず、重複を承知でなんども同じ言葉を繰り返すからだ。なぜそんなくどいことを? 「それ」って何を指しているのかといったあいまいさをまぎれこませたくないのだ。といったことを、ていねいにやってくれる本。法律だけじゃなく、科学論文の文体、辞書の文体、批評の文体、などについて「なぜそうなっているのか思い巡らしている。
これは、私たちが日本語を「道具として」どう使っているのかという考察なのだ。例に出した法律の文章がいちばんおもしろかったのは、これがいちばん「道具」として使われている例だったからなのではと思う。
科学、とタイトルにあるが、検証可能であることを示すため、いちいち例を出してあるのはよい。ただ、小説の文体でレイモン・クノーもってこられたりするのはちょっとずるい気がする。
これを読んで文章がうまくなりたいとか、作家ごとの個性を解説してほしいとか、そういう用途には向かない。でも、やりようによってはもっとおもしろくなるアプローチなんではないかとは思う。
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文体をベースに様々な本を紹介している好著だ.1665年創刊の「哲学紀要」は西洋の文化を文書の形で残す偉大な試みで、この時代の人の先見性に驚嘆する.「吾輩は猫である」の詳細な解説が楽しめる.ヨハネによる福音書の冒頭の言葉の解説もよく調査している痕が観察できて、楽しめた.
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試みはすごく面白いと思う。文章をその内容ではなく、どう書かれているか、という点に着目している。全体的にあっさりしており、今後の展開に期待。
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「文体」というとふつうは、著者の性格や思想といった精神的な何かを表現するものとして言われることが多いが、この著作は文体を「物質的」な「配置」として扱い、それがいかなるものかを考えていこうとしている。
たしかベルクソンは物質を「弛緩」した状態にあるものとしたが、ここでも物質的な配置の様々が弛緩した状態で並んでいるという印象。今後、「文体の科学」として成立していくための素地がここにあるのではないだろうか。
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図書館本。 タイトルの通り、まさに文体を科学的に細かく追究している本です。文体といっても文学に限らず、映画の字幕、広告の文字、法律の文など、文章すべてを取り扱っています。小説の文体は最終章だけですが、文体というものを知る上ではとても参考になると思います。けれど様々な文体を扱っているのでそれぞれの分野を深く追究はできません。これを読んでから自分の追究したい分野に進むという感じです。本書を読むと、本当に世界は言葉で出来ているんだなぁと感じました。文体を追求したい人にはとってもお勧めです。
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様々な文章を俯瞰して見ていく感覚が面白かった!文章が書かれている物質や読む環境によって印象が変わるかもしれない話とか、小説のページ数を距離として考えて、読書を移動としてとらえる感覚好きだー!この感覚と時間や移動の話はほかの表現でも感じるかもなぁ・・・!
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ゲーム作家であり文筆家である著者が様々な文体を考察する本です。一口に文章といっても、それが科学書なのか、論文なのか、哲学書なのか、法律文なのか、小説なのかによってその文体が違ってきます。本書では、そういったそれぞれの言葉によって描き出す対象の違いによってどのように文体が違ってくるのかをじっくり考察しています。読み終えて、読書についての視野が少し広くなったように感じられました。
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文体はヴィークルだ、と村上春樹は言っていたけれども、わかったようなわからないような。
そんな文体についてまっすぐに向き合った本。あらゆる文章を取り扱い、そこに見えているもの、見えないものを分析する。まさに人文が行うべき科学であった。文章の配置のこと。文章は基本的に独り語りであること。暗黙の了解で人間が読むことが前提とされていること。文学の文体研究は圧巻だった。
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文章の姿形をリバース・エンジニアリングしてみよう、と。
文体とは何か。どうして文体は使い分けられるのか。
そして、「文の体」なので、書いてあることだけでなく、文章が象られた物質、媒体、姿形も視野に入れてみる。
とにかく身の回りは言葉だらけ。僕も言葉を捏ねくり回しながら生活している。短い文章にも人間の様式があらわれる。
映画の字幕、数式、言葉にもさまざまなかたちがある。ことわざ、アフォリズムの類いも一つの様式。コンピュータの画面に出てくれば、また一味変わる。
法律、信仰、コンピュータ。いろいろなシーンでの文体がある。
とにかくいつも書いて読んで、をしている僕らだから、それぞれの書き方、読み方を考えるのは身近であり大切である。という例が多数。古今硬軟、思わぬ方向からパンチが飛んでくる楽しい本。
言葉と物質が、物質と精神が接する面で何が生じているかを考える、とは著者の締めの言葉だ。
このところ買う本は電子書籍の割合がずいぶん高くなっていた。中身がわかればよい、という考えは、文体の表層しか味わえていないのかもしれない。
説明が難しい本だが、読んで、そうして何かを書いている人なら、感じ取れる、と思う。