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「聞いてくれ!君が好きなんだ。こんなに誰かを好きになったのは初めてさ。」
PCに送られる甘いメッセージ。しかし、男性はスカイプで女性に頭を切断した遺体の写真をちらりと見せて得意満面の表情を浮かべる。女性が、ネット上でやり取りをしているのは、2014年6月にイスラム国の樹立とカリフへの即位を宣言したアブー・バクル・アル=バグダーディーと最も近いフランス人戦闘員と言われるアブ・ビレル・アル・フィランシなのだ。
パリの女性ジャーナリストが、18歳の迷えるフランストュールーズに住む改宗者メロディを装い、たまたまメッセージを送ってきたビレルとやり取りをするようになり、最終的にビレルに誘われて、トルコからラッカへ向かう振りをしたものの、オランダで引き返し、記事を公表し、ISILから報復系を告示されるようになったという経緯を記者の一人称で綴ったルポ。ビレルは、スカイプのやり取りだけで、メロディとの結婚を申し込み、他方でジハードへの参戦を促す。
日本では実感できないが、フランスやヨーロッパでは現実に、ISILに参加する若者が増えているという事実がありありと感じられる。ただ、作者のビレルに対する嫌悪感が出ているため、なぜ若者がISILに魅かれるのか、ビレルがメロディを信じて求婚したのかが分かりにくい。
「今どきの若者は、金儲けにも武器にも麻薬売買にもたいして憧れない。彼らの夢は、他人に尊敬されて、さらに認めてもらうこと、つまり『英雄』になることだ。戦場で武器を使い、それをネットで報告するのは、町のチンピラのボスになったりプレイステーションで憂さ晴らしをしたりするのとはわけが違う。
だが、ジハード戦士に惹かれるのは、他人から認められたいタイプの若者ばかりではない点にも注意しなければならない。というのも、最近レバントへ旅立つ若者の中には、一人で過激思想を深めているケースもあるからだ。」
「ここはすばらしいところだよ。観光のスポットも多い。海もきれいだし、土地の起伏が何とも言えずにいいんだ。女友達もいっぱいできるさ。女同士でつるんで女だけの趣味ってやつをやるといい(彼は笑う)。ここには本当の仲間がいる。これからはここが君の本当の居場所さ。昼間は俺が戦闘に行っていないから、午前中はアラビア語の勉強をして、午後からは好きなことをやったらいい。女同士で時間を過ごしたり、病院や施設で子供たちの面倒をみたりしてね」
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何か起こるのではないかと思わせぶりだが最後まで何も起きない。読んだ時間を返して欲しいと久々に思わせる本だった。
30代のフランス人ジャーナリストの女性はネットで知り合ったIS幹部に20歳だと偽って接近し、「シリアに行きたい」「あなたと結婚したい」などと言ってISの情報を聞き出そうとする。結局、ついうっかり使ってしまった私用の携帯番号がばれてしまい肝を冷やす場面はあるが、トルコからシリアに入るふりだけしてフランスに戻る。
相手のIS幹部の愚かさや俗物ぶりをあげつらっているのだが、ネットなりすましで嘘にまみれた取材はどうなのか?
宗教に対する狂信はダメだが、マスコミとして悪のテロリスト集団の秘密を暴くのあれば何をしても許される、という独善ぶりにも戦慄。
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欧州の若者がどの様に希望を失い、どの様にイスラムに傾倒し、そしてイスラム国がどのようにしてそう言った若者達をシリアへ送り込んでいるのかを解き明かすルポかと思ったのだが、そして実際書き手はそれをあぶり出すつもりでいたのだが、結果としてひとりの狂った男を描き出してしまっている。文そのもののせいなのか翻訳のせいなのか、その狂気が前面に立ってしまい、イスラム国の全体像とは程遠いのだが、こういった狂気が隣家にあるかもしれない欧州(この場合はフランス)を理解するには良かった。結局、こう言った流れが、この前のパリのテロへもつながって行く。
しかし重たい。読み終わったらグッタリ。
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陸続きだからって、そんな簡単に越境して
改宗して、生活を捨てる若者がいるなんてのが
まったくぜんぜん理解を超えているが、
これが今の世だというならもう受け入れるしかない。
しかもSNSを介して、簡単に説得されてしまうなんて、
驚きより呆れる感じなのは、自分が若者ゾーンではないからなのか、日本人だからなのか、無宗教だからなのかは甚だ不明。
踏み込んで行く様や、しつこすぎる相手が恐ろしいことこの上なし。
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この方の書いた英語記事を読んでいて面白かったので買ってみたが、本にするほどのネタは無かったように思う。スカイプを通じてISメンバー(一応幹部)の1人とチャットをしていたという程度で、ISの一面を見ることはできたかと思うが、「ISの実態に迫る」というほどのものではなかった。著者の苦悩とか生活に関する記述は不要であったと思うし、最後の方はそんなに精神状態に影響するほどの罪悪感を感じるくらいならこんな取材しなきゃいいのでは?と思ってしまった。